宅地建物取引業法はどのような理由で作られたのか?2. 度重なる業法改正(6)
不動産仲介手数料を節約、削減したい方向けに仲介サービスを提供しているトータルマネジメントです
日本経済のバブル化によって不動産業界には更に厳しい規制がもうけられるように
(10) 第10次改正(昭和63年5月6日法律第27号、政府提案)
ア バブル経済による地価急騰
昭和60年9月のプラザ合意以後、 円高緩和策として大幅な金融緩和策がとられ、
地上げ、土地ころがし等の投機的な土地取引が横行し始めました。
昭和61年10月、建設省及び不動産流通近代化センターは、
不動産流通標準情報システム (レインズ)の導入が始まりました。
他方、銀行の不動産業向け貸出残高は、
昭和61年12月で前年比35.1%の増加を示しました。
(平成4年版経済白書)
地価は、昭和62年4月の前年比率76%と過去最高を記録する等急騰しました。
投機的な土地取引及び地価の高騰を抑制し合理的な土地利用を確保するため、
同年6月に国土利用計画法改正により監視区域制度(ミニ国土法)と呼ばれました。
土地取引の際に届出には必要な面積が500㎡以上に引き下げられ、
同年10月に短期重課税制度(2年以内の土地譲渡益には90%超の分離課税)の
創設など土地税制を改正強化しました。
平成2年にはバブル経済が頂点に達し、
東京の中心商業地に端を発した地価上昇は、都心部の住宅地、束京の周辺地域に波及し、
さらに大阪圈、名古屋圈でも上昇しました。
地価急騰はインフラ整備や良好な都市環境創りに大きな支障をもたらし、
一部の悪質な業者による投機的土地取引や暴行、
脅迫等によって借地借家人を強引に追い出す悪質な地上げが社会問題化しました。
*宅建業者の数の動きをみると、 バブル経済を反映して、 昭和61年度から急激に増加し、
昭和62年度は12万0664 (個人業者33.3%)、
昭和63年度は12万6676 (個人業者30.8 %)、
平成2年度は14万2008(個人業者26.5%)
と増加の一途をたどりました(建設白書平成元年版、平成3年版)。
宅地建物取引主任者資格試験の受験者数は、
昭和50年代が10万人台であったのが、
昭和62年度に20万人台、
昭和63年度に約24万人、
平成2年度には34万2111人 (申込者数42万2904人) に達するという過熱状態に至りました。
イ 土地臨調による答申
臨時行政改革推進審議会(いわゆる土地臨調)は、
昭和62年10月12日、「当面の地価等土地対策に関する答申」 をまとめ、
土地取引の適正化のために、
1.不動産業者に対する指導の徹底、
2.宅地建物取引業規制の見直しを提言。
「改正内容」
① 宅建業者の資質の向上と業務の適正化
a) 免許基準の強化
暴力団等の悪質な業者を排除するため傷害、暴行、脅迫等の罪を
犯し罰金刑に処せられた者を欠格事由としました。
b) 宅地建物取引主任者制度の改正
事務所以外の案内所等についても専任の取引主任者の設置義務を定め、
宅地建物取引主任者の登録の欠格事由を強化し、
宅地建物取引主任者の登録要件として一定期間以上の実務経験を必要としました。
設置すべき専任の取引主任者の人数を法律事項ではなく省令改正で措置することとし、
専任の取引主任者の数を業務従事者5人に1人以上に引き上げました。
c) クーリング・オフ制度
クーリング・オフの権利行使期間を5日間から8日間に延長し消費者保護を図りました。
d)業務の適正化
従業者証明書制度の改正、 従業者名簿の備付けと取引関係者の請求による関覧の義務づけ
② 宅地建物取引に関する保証の充実
未完成物件だけでなく完成物件についても手付金等の保全措置を義務づけ、
営業保証金及び弁済業務保証金分担金を引き上げ (政令改正)、
手付金等保管事業に関する規定を整備しました
③ 不動産流通市場の整備、近代化
専属専任媒介契約を認め(平成2年5月6日施行)、これを受託しました
宅建業者には指定流通機構への物件登録を義務づける等、媒介契約制度を改正しました
④ その他
免許の更新等に関する規定、 監督に関する規定、 罰則規定を整備しました。
参考文献:国立国会図書館三訂版「逐条解説」宅地建物取引業法より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐