不動産仲介業務の現状と課題 2.不動産仲介業務の課題(その3)
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不動産仲介業務の現状と課題
(4) 仲介報酬の適正化
宅建業法では、仲介報酬の額は、
国土交通大臣の定め (報酬告示)により、
この額を超えて報酬を受けてはなりません。
これは、仲介業者が委託者から
受け取ることのできる報酬額の上限 (最高限度額)を定めたものであって、
当然に最高限度額を請求することができるとする趣旨ではありません。
ところが、現在の仲介報酬は、
取引価格の “3%プラス6万 円”
(仲介報酬の速算式によると、取引価格に3%を乗じて、これに6万円を 加算した額)
として最高限度額の報酬を当然の如く請求できるかのようです。
特に一般の消費者を対象とする中古住宅の売買仲介では、
委託者は不動産取引に不慣れであり、
仲介業者も報酬額として当然の如く
3%プラス6万円を請求できるとの前提で報酬を請求することから、
委託者も取引価格の3%プラス6万円で
報酬が固定されているものと思い込んでしまうこともあります。
しかし、報酬告示は、報酬額の上限を定めたに過ぎず、
仲介業務の内容によっては当然これよりも低額になる場合もあり得ます。
本来、仲介報酬の額は市場競争に委ねられるべきであり、
仲介業務の質、仲介の難易、期間、労力等の諸事情を
斟酌して適正に算定されるべきであり、
仲介業者は常にこれを認識しておく必要があるとともに
委託者にもその趣旨を十分 周知徹底させる必要があります。
※仲介業者は、消費者が報酬告示の趣旨を
正しく認識することができるように仲介契約の締結に当たり、
具体的な報酬額については依頼者が受けた利益、
売買価額、仲介の難易、期間、労力その他の諸事情を考慮して
依頼者と協議して決める事項であることを説明すべきです。
(5) 職業倫理の確立
仲介業者に対する専門家としての
社会的責任と信頼が高まれば高まるほど、
仲介業者としての職業倫理の高さが求められます。
仲介業者が関与する不動産取引は、
個々人、企業の重要な財産取引であり、
不動産は生活基盤、
企業活動の基盤であることから、
仲介業者が知りうる事項は、
売却目的、資金調達能力とその方法、
担保の有無、収入、勤務先、家族構成、
企業の資産内容等、きわめて広範囲にわたり、
かつ秘密性の高い情報が含まれています。
したがって、仲介業者がその職務上知り得た秘密を保持することは、
その信頼を確保し適正、公平な業務を遂行する不可欠の要素です。
また、仲介業者は、不公正な取引に
加担すべきでないことはいうまでもありません。
取引関係者から依頼されて取引価格を水増しし
金融機関から多額な融資を受けたり (いわゆるオーバーローン)、
不動産譲渡税の負担を回避するため
取引価格を圧縮して契約書を作成することに協力する等、
仲介業者が違法な方法を画策して
不動産取引を勧誘するようなことは厳に慎むべきです。
専門的な知識も取引経験もほとんどない
一般の消費者にとって不動産取引を理解することは困難です。
そのため、委託者は、
不動産取引の専門家である仲介業者の説明や指導、
助言に頼らざるを得ないし、“業者に任せる” といった状況も出てきます。
もちろん、最終的には委託者が
自己の責任と判断で契約を締結するのであるが、
仲介業者が適切に助言、指導することは
契約を締結するか否かの判断において重要な要素を占めます。
いつ、どのような取引条件で、
どのように交渉すべきか、
契約を締結すべきかといった取引に関する事項は、
仲介業者が委託者と協議、
相談しながら進めるとしても、
誠実かつ適正に仲介業務を遂行し委託者の利益を図るには、
仲介業者や営業販売員等の従事者に
不動産取引に関する専門的知識や交渉能力をはじめとする
すぐれた資質が求められ、同時に高い職業倫理を備えることが必要です。
不動産流通業界は、
一般の委託者から受けている信頼を傷つけることのないように、
少なくとも委託者と直接対応する営業販売員については
日頃から継続的な研修を施して専門的能力の修得と質の維持、
向上に努めるとともに不動産流通業界における倫理規範を確立させ、
高い倫理観の醸成、向上を目指すべきです。
仲介業者は、不動産取引の専門家として
社会的な信頼を受けその責任を果たすためにも、
単に宅建業法という業務規制法の義務規定、
禁止規定を遵守すれば足りるものではありません。
不動産業界は、不動産取引業に従事する専門家として
宅建業者の職業上の倫理規範ないしは
行動規範を策定してこれを自ら律し、
高度な職業倫理を対外的にも宣明することによって、
取引関係者や社会から信頼を得るとともに、
ひいては、不動産業界全体に対する
社会的信用を高める努力をする必要があります。
参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐