不動産仲介業務の現状と課題  3.不動産仲介契約とは(その2)

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不動産仲介業務の現状と課題

 

 

不動產仲介契約とは(その2)

 

2 不動産仲介契約の意義 

宅建業法が制定される以前は、

不動産仲介業はいまだ成熟しておらず、

社会状況としても消費者保護の観念はなく、

仲介とは “口利き”により契約当事者間に契約を成立させることでした。

 

仲介業者は取引物件の権利関係を調査し

委託者に説明することまでは求められなかったし、

委託者も仲介業者にそこまで期待していなかったと思われます。

 

しかし、昭和27年6月に宅建業法が制定され昭和30年代に入ると、

地面師や売却権限を有しない者から持ち込まれた不動産について、

仲介業者が自ら権利関係の調査を十分に行わないまま売買契約、

賃貸借契約を成立させて買主、

借主に多大な損害を与えるといった紛争が裁判になり始めました。

 

その後、仲介業者の責任をめぐる裁判例が徐々に集積され、

次第に仲介業者の責任、仲介業務の範囲が明確になっていくこととなります。

 

加えて、宅建業法の改正が重なるにつれて

宅地建物取引業に対する規制が詳細となり、

昭和42年8月の法改正で消費者保護行政を反映した規定

(例えば物件説明 書の交付・説義務、旧宅建業法14条の3) が設けられました。

 

昭和46年6月の法改正では

「購入者等の利益の保護」を宅建業法の目的に加え、

宅建業者 (売主業者、仲介業者)の重要事項説明義務に関しては、

その後も一段と詳細な規定が設けられました(法35条、施行規則16条から16条の4の7)。

 

仲介業者についていえば、

宅建業法によって宅地建物取引業の免許制度が実施され

業務規制が行われていること、

免許を受けて宅地建物の売買、

賃貸借等の仲介を業として営み報酬を得ていること、

宅地建物取引の仲介業に従事する専門家として

社会的信頼を受けていること等にかんがみて、

仲介業者は、宅地建物取引を誠実かつ適正に進めるために

高度な業務上の注意義務を負うとの裁判例がほぼ定着しています。

 

仲介は、当事者双方の間に立って

契約の成立に向けて尽力する行為であり、

その中核は成約に向けて

当事者の間に立って取引交渉、条件調整をすることです。

 

売却仲介の場合、取引物件の事前調査、

価格査定は売却に当たって必要な仲介行為であり、

広告活動は買受け希望者を探すための

重要な仲介行為の一つであります。

 

買受け仲介の場合、買主の希望に適った取引物件を

探索することは買受け仲介に当たって必要な仲介行為であり、

物件調査、価格査定を行うことは

重要な仲介行為の一つであります。

 

契約が成立すれば、

成約という仲介契約の本来の目的は終了しますが、

売却仲介、買受け仲介を問わず、

仲介業者は所有権移転、

引渡しと残代金の支払いに立ち会い

一連の取引が結了するのを見届けるという

契約完結まで事務を処理するのが通例です (大阪地判昭28)。 

 

このような仲介業務の実態を踏まえると、

不動産仲介契約は、

仲介業者が委託者(依頼者)から不動産売却、

賃貸等のあっせん委託を受け、

物件情報の探索・入手、物件調査、買主等への説明、

当事者の間に立って取引条件を交渉、

調整して契約の成立に向けて尽力することを受託し、

仲介業者の仲介行為により

当事者間で売買等の契約を成立させたときには、

仲介業者が委託者に対し

報酬を請求することができる契約である、

と定義づけることができます。  

 

 

参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より

 

 

 

 

筆者:大脇和彦プロフィール

愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐