不動産媒介契約とは何か (その2)
不動産仲介手数料を節約、削減したい方向けに仲介サービスを提供しているトータルマネジメントです
不動産媒介契約とは何か (その2)
※ここではあえて“仲介”ではなく同意語の“媒介”という言葉を用いていきます。
何故なら“媒介”という文字しか用いられてない
宅地建物取引業法を中心として深堀するためです。
2.不動産媒介業に対する業務規制
宅地建物取引業法は、
業務の適正な運営と宅地建物の取引の公正を確保するために制定されています。
宅地建物取引業法は、宅地建物の売買を業とする売買業に加えて、
宅地建物の売買・貸借の代理業・媒介業も規制しています。
宅地建物の売買・貸借・交換の媒介業を営むには、
宅地建物取引業の免許が必要です(3条1項)。
宅建業法第5章「業務」は、
- 宅建業者の業務処理の原則(31条)、秘密を守る義務(45条)などの一般的な義務
- 契約締結に至る過程における適正な判断の確保
- 適正な契約内容の確保
- 契約の履行の確保
- 契約関係からの離脱の確保
以上のように、宅地建物取引の一連の過程について相当詳細な業務規制を行っています。
媒介業に関する規制として、次のものが特に重要です。
・業務処理の原則(31条1項)
・取引態様の明示(34条)
・媒介契約の規制(34条の2)
・重要な事項の不告知・不実告知の禁止(47条1号、47条の2)
・報酬額の制限(46条)と報酬告示
・不当に高額の報酬要求の禁止(47条2号)
これらの規制は、
不動産媒介業者が業務を適正かつ公正に行うために重要な役割を果たしています。
3.不動産媒介
不動産媒介は、媒介業者が当事者の間に立って
不動産の売買等の契約の成立に向けて尽力する事実行為であると定義されています。
「契約の成立」(成約)という結果が実現されたかどうかは、
売買契約書・賃貸借契約書の締結という事実によって比較的容易に認定できます。
これに対し、「契約の成立に向けて尽力する事実行為」は、
取引の手がかりから契約の成立直前に至るまでの、
一定の期間にわたる媒介業者の業務遂行の状態を指します。
不動産取引は個別性が強く、
どの事実をもって媒介行為(媒介業務、媒介活動)といえるかが判然としないことは
珍しくありません。
そこで、裁判例を踏まえ「契約の成立に向けて尽力する事実行為」の
具体的な内容を理解しておく必要があります。
◆不動産売買の媒介
不動産売買の媒介行為として、
物件調査(現地調査、権利調査、法令調査など)、
価格査定、広告、取引の相手方・取引物件の探索(レインズへの物件登録など)、
現地案内、物件資料の集・提供、契約交渉(条件調整)、
売承諾書.買付明書の交換、進捗状況や務の処理状況の報告、
重要事項説明書の交付・説明、売買契約書の総結(“37条書面の交付)、
契約立会、融資手続の助言、決済・引渡しに向けた助言、決済・引渡しの立会などの
一連の行為が挙げられます。
媒介行為に該当するかどうかの認定には、
上記の一連の行為すべてを充足する必要はありません。
取引の相手方や取引物件の探索は、
契約交渉や契約締結の手がかりとして、
媒介行為の開始を基礎づける重要な要素です。
契約締結に向けた取引条件に関する情報提供、
相手方との契約交渉(条件調整)は不動産媒介の中核的(コア)な要素です。
いまだ契約を締結するかどうかについて
最終的に意思決定していない当事者の間に立って、
成約に向けて情報提供や契約交渉(条件調整)を行うことは媒介行為に当たります。
取引物件の紹介(情報提供行為)のみにとどまり、
当事者間の契約交渉に至らない場合には、媒介行為に当たりません。
また、購入希望者が媒介業者に対し
購入希望物件を指定して契約交渉を依頼する場合は、
物件情報の提供なしに媒介行為が開始されます。
決済・引渡しは「履行の補助」であり、媒介行為とは異なります。
【解釈・運用の考え方】( 第34条の2関係)
宅地建物取引業者は、媒介契約の締結に先立ち、
媒介業務を依頼しようとする方に対して、
不動産取引の全体像や受託しようとする
媒介業務の範囲について書面を交付して説明することが望ましいです。
この際、交付される書面は、別添1を参考にすることが望ましいです。
また、宅地建物取引業者は、
媒介契約を締結する際には、
依頼者に対して専属専任媒介契約、
専任媒介契約、一般媒介契約の相違点を十分に説明し、
依頼者の意思を十分に確認した後で媒介契約を締結するものとします。
さらに、宅地建物取引業者が媒介契約を締結する際に、
売買等の契約当事者の片方からのみ
媒介の委託を受けることを依頼者に約束した場合には、
その内容を媒介契約書に明記することとします。
4.媒介と情報提供
媒介と情報提供は異なる概念であり、
物件紹介や情報提供は契約締結の機会を与えるが、
契約成立に向けた努力を引き受けないため、媒介とは区別されます。
宅建業法の規制は媒介行為を対象としており、
指示仲立や情報提供は規制の対象外です。
しかし、実務上では媒介と情報提供を明確に区別するのは難しく、
物件紹介と称しながら媒介行為が行われることが多いです。
例えば、設計事務所や建設業者が建設用地を探している
購入希望者に物件情報を提供する行為は情報提供であり、
媒介には当たりません。
しかし、設計事務所や建設業者は見返りとして、
購入者が建物を建設する場合には契約を求めることがあります。
彼らは見返りを確保するために、
現地案内や資料提供に留まらず、
当事者間の意向や条件の調整や売買契約書案の提供などを行い、
契約成立に向けて尽力することもあります。
このような行為は、情報提供に留まらず、
他者間の契約成立に向けた実際の行為であり、
媒介行為に該当します。
したがって、設計事務所や建設業者が宅地建物取引業の免許を持っていれば、
重要事項説明書や37条書面の交付・説明、宅地建物取引士の重要事項説明書や
売買契約書への記名押印などが求められます。
これらの義務を怠ると監督処分の対象となります。
また、宅地建物取引業の免許を持たずに媒介行為を続けると、
無免許営業の禁止に違反し、刑罰や罰金の対象となる可能性があります。
投資用物件の販売では、
売主である宅建業者Dや媒介業者Eは自ら買主を探すのではなく、
顧客情報を持つ別の宅建業者Fに「見込み客」の紹介を依頼することがあります。
宅建業者Fは広告やダイレクトメール、
電話などを通じて投資用物件に興味を持つ人々を探索し、
「見込み客」を絞り込んで、
その後Dの販売物件の資料提供や収支状況の説明、
融資手続きの案内、購入手続きのアドバイス、
金融機関との融資手続きの調整などを行います。
そして、購入意思が固まった段階で「見込み客」としてDやEに紹介します。
成約が成立すれば、宅建業者FはDやEから単なる紹介料ではなく、
媒介報酬に相当する金額を受け取ります。
宅建業者Fの行為は単なる情報提供ではなく、
Dとの売買契約の成立に向けた取引勧誘を含む媒介行為です。
「見込み客」の紹介を受けた後、
重要事項説明書の交付や売買契約書の締結立会を宅建業者Eが行っても、
EとFは売買契約の成立に向けた一連の取引の流れの中で
媒介行為を分担・連携しているに過ぎません。
したがって、宅建業者Fは宅建業者Eと共同の媒介業者として扱われ、
買主に対して重要事項説明書の交付や「37条書面」の交付、
宅地建物取引士の重要事項説明書や売買契約書への記名押印を行わなければなりません。
参考文献:国立国会図書館 「不動産媒介契約の要点解説」より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐