不動産Q&Aシリーズ  相続相談Vo.3

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これからのマンションはどう評価する?

 

<QUESTION>

 

以前から話題になっていた

分譲マンションの相続税評価の

新しい計算方法では相続税評価が

従来より高くなるそうですが、

国税庁から公表されている計算式を見ても

複雑すぎてイメージがつかめません。

 

相続対策のために分譲マンションを買うことも考えていましたが、

これからは相続対策にならないのでしょうか?

 

<ANSWER>

 

令和6年1月1日から

ほとんどの分譲マンションにおいて

相続税評価額は従来より高くなると考えられます。

 

しかし、相続対策としての効果が失われたわけではありません。

 

 

【なぜ相続対策に分譲マンションなのか?】

 

分譲マンションを購入することが

相続対策としてどのように役立つかについて、

わかりやすく説明します。

 

不動産を相続対策に利用する主な理由は、

マンションなどの不動産の

「市場価格に対する評価額の圧縮率」が高いからです。

 

例えば、預金が1億円ある場合、

そのまま相続が発生すると

相続税の評価額も1億円となります。

 

しかし、その1億円でマンションを購入した場合、

相続税の評価額は大幅に下がることが多いです。

 

特に、都心に位置する人気のタワーマンションなどでは、

時価が1億円でも相続税の評価額が3,000万円となり、

70〜80%の圧縮が可能な場合もあります。

 

ただし、このように相続税の計算で

低い評価を利用する方法について、

国税当局は厳しく見ています。

 

実際、この点に関する裁判が起こり、

令和4年には最高裁判所が

国税当局の判断を支持する判決を下しました。

 

その結果、分譲マンションの評価方法について再検討が行われ、

新しい評価方法が令和5年9月28日に公表され、

令和6年1月1日からその新しい方法が適用されることになりました。

 

 

【分譲マンションの新しい計算方法】

 

 

図表1のように分譲マンションの

新しい相続税評価方法がとても複雑になっているため、

ここではその計算式の意味と使い方を簡単に解説しましょう。

 

この新しい計算式の目的は、

分譲マンションの相続税評価額を

時価の60%まで引き上げることです。

 

つまり、この方法によると、

マンションの相続税評価額は

時価の60%が基本的な下限になるということですが、

実際の適用では必ずしも60%が保証されるわけではありません。

 

分譲マンションの相続税評価額を計算するためには、

「築年数」「総階数」「所在階」「敷地持分狭小度」

という4つの要素が必要です。

 

これらの情報はマンションの登記事項証明書から取得できます。

 

まずはこの証明書を準備することから始めましょう。

 

・築年数:

建築されてからの年数です。

新しい建物ほど評価乖離率は高くなります。

 

・総階数:

マンションの全階数で、地下階は含まれません。

階数が多いほど評価乖離率は上がります。

 

・所在階:

マンション内での具体的な階層。

上層階に位置するほど、評価乖離率は高くなります。

 

・敷地持分狭小度:

マンションの敷地面積と

個々の部屋が持つ敷地利用権の割合を用いて計算します。

 

敷地面積が狭いほど、評価乖離率は上がります。

 

これらの要素を基に計算された評価乖離率は、

従来の自用地評価額に乗じられ、

さらに0.6を掛けたものが新しい相続税評価額となります。

 

ただし、この0.6を乗じるかどうかは

評価乖離率の値によって異なります。

 

要するに、新しい計算方法では、

築年数が少なく、

高い階層に位置する高層マンションほど、

相続税評価額が高くなる傾向にあります。

 

この変更は、相続税負担の計算において、

より詳細なマンションの特性を反映させるためのものです。

 

 

 

【実際に計算してみましょう】

 

 

図表2のように最近導入された

新しい計算方法による

分譲マンションの相続税評価額について

例としてあるタワーマンションの場合を考えてみます。

 

このマンションの市場評価価格は1億円ですが、

従来の相続税評価額は約2,300万円で、

これにより約80%の評価額の圧縮が行われていました。

 

しかし、新しい計算方法を適用すると、

相続税評価額は約4,200万円に上昇し、

約1.8倍の増加が見られます。

 

特にタワーマンションのような高層建築では、

この新しい計算方法の影響が大きいことが示されています。

 

一方で、低層で敷地面積が広いマンションでは、

続税評価額の増加が1.2~1.5倍に

収まるケースが多いようです。

 

いずれにせよ、多くのマンションでは

従来の方法よりも相続税評価額が増加する結果となります。

 

さらに注目すべきは、

新しい評価額が市場価格に対して

どのような割合であるかという点です。

 

多くの場合、新しい相続税評価額は

市場価格の約40~50%となっていますが、

計算式の本来の目的であれば60%前後であるはずです。

 

この乖離は、国税当局が

新しい計算式を構築する際に使用したデータが少し古い、

平成30年のものであるために発生しています。

 

これは直近の資材価格高騰などの

影響を避けるための措置であり、

今後3年ごとの見直し方針が示されていますので、

次第に「時価の60%」に近づくことが期待されます。

 

このような変更は、

相続税の計算に大きな影響を与えるため、

不動産を保有する方々、

特に相続計画を検討中の方々にとって重要な情報となります。

 

今後の税制の動向に注意を払い、

適切な対策を講じることが推奨されます。

 

月刊不動産2024年1月号より抜粋・編集

 

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐