不動産Q&Aシリーズ  賃貸相談Vo.3

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全日本不動産協会会員の不動産業者に向けた専門誌の記事を

一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

仲介業者に賃貸人の資力信用調査の義務はあるのか?

 

<QUESTION>

 

私たちの会社は、

ある賃貸物件の仲介を行いました。

 

その物件には抵当権

(借金の担保として設定される権利)がついていました。

 

その後、その抵当権が実行され、

物件が競売にかけられて新しい所有者に代わりました。

 

その結果、借りていた人(賃借人)は

その物件を退去しなければならなくなりました。

 

しかし、退去後に敷金が返還されなかったため、

賃借人は私たちに対して次のように主張しました。

 

「この物件には複数の抵当権が設定されていたのだから、

仲介業者として賃貸人が倒産する可能性を予測できたはずだ。

 

だから、契約時に賃貸人の支払い状況や財務状況について調査し、

説明するべきだったのに、それを怠った。」と。

 

そこで、賃借人は敷金分の損害賠償を求めてきました。

 

仲介業者に賃貸人の財務状況や

信用を調査する義務はあるのでしょうか。

 

 

<ANSWER>

 

不動産の仲介業者には、

賃貸契約がスムーズに進むように、

物件に関する重要な情報を調べて説明する義務があります。

 

でも、賃貸人(オーナー)や

賃借人(借り手)の財務状況や

信用について調べる義務はありません。

 

これらは取引をする本人が

自分で調べるべきこととされています。

 

ただし、仲介業者は、

物件に抵当権(借金の担保)が設定されている場合、

その事実を説明しなければなりません。

 

そして、もし抵当権が実行されて

物件が競売にかけられた場合、

6か月以内に退去しなければならないことや、

競売で物件を買った人からは

敷金が返ってこない可能性があることも

説明する必要があります。

 

 

【不動産仲介業者の責務】

 

不動産の仲介業者と依頼者の間の契約は、

委任契約に似た「準委任契約」とされています。

 

委任契約では、依頼された側(受任者)は、

依頼内容に従い、

適切な注意を払って仕事をする義務があります(民法第644条)。

 

不動産業者の場合、

契約の目的は「賃貸契約がスムーズに行われ、

契約者双方が目的を達成できること」です。

 

そのため、不動産業者は専門家として

以下のようなことを調べて説明する義務があります:

 

– 売主が物件の正当な権利者であるかどうか

 

– 物件に設定されている権利の種類や内容、登記の有無

 

– 都市計画法や建築基準法などの法律による制限の有無と内容

 

– 私道の負担や電気・ガス・排水設備の整備状況

 

– 賃貸物件に欠陥があるかどうか、その内容

 

こうした義務は、宅地建物取引業法により、

不動産業者が宅地建物取引士を通じて

説明するように定められています。

 

 

【媒介業者が義務を負わない事項】

 

不動産の仲介業者には、

専門家として物件に関する情報を

調べて説明する義務があります。

 

しかし、賃貸人(オーナー)や

賃借人(借り手)の財務状況や信用について

調べる義務はありません。

 

これは、取引をする本人が

自分で調べるべきこととされています。

 

ある裁判の例では

物件に設定されていた根抵当権が

整理回収機構に移ったケースについて、

裁判所は以下のように判断しました。

 

「整理回収機構に債権が譲渡されたからといって、

オーナーが必ず倒産するとは限らないし、

物件の根抵当権がすぐに実行されるとも言えない。

 

また、オーナーと抵当権者との間の債務状況を調べるには、

抵当権者から情報を聞き出す必要があるが、

これはオーナーの同意がなければ難しい。

 

したがって、不動産仲介業者がオーナーと

抵当権者との交渉状況を調査して説明する義務はない」

とされています(東京地裁 平成19年3月14日判決)。

 

 

【抵当権に関する仲介業者の説明】

 

不動産の仲介業者(宅建業者)は、

賃貸物件に抵当権が設定されている場合、

賃借人に対して次のことを説明しなければなりません:

 

  1. 物件に抵当権が設定されていること。
  2. 万が一、抵当権が実行されて物件が競売にかけられた場合、
    新しい所有者から明け渡しを求められたら、
    6か月以内に退去しなければならないこと。
  3. 賃貸人に預けた敷金は、
    新しい所有者からは返してもらえないこと。


これらの内容を「重要事項説明書」に記載し、

賃借人に対してしっかりと説明する必要があります。

 

こうすることで、賃貸取引に伴うリスクを

賃借人に理解してもらうことができます。

 

 

ポイント】

 

1.不動産の調査・説明義務 

 

不動産の仲介業者は、専門家として、

売買契約がスムーズに進むように物件に関す

調査や説明を行う義務があります。

 

これにより、売主と買主が契約の目的を達成できるようにサポートします。

 

2.賃貸人や賃借人の財務状況について 

 

賃貸人(オーナー)や賃借人(借り手)の財務状況や信用については、

取引を行う本人が自分で調査すべきこととされています。

 

仲介業者にはこれを説明する義務はありません。

 

3.抵当権が設定されている物件について 

 

もし賃貸物件に抵当権が設定されている場合、

仲介業者は以下の点を説明する必要があります。

 

   – 物件に抵当権が設定されていること。

 

   – もし抵当権が実行されて競売にかけられた場合、

     新しい所有者から明け渡しを求められたら、

     6か月以内に退去しなければならないこと。

 

   – 賃貸人に預けた敷金は、新しい所有者から返してもらえないこと。

     これらの説明をすることで、賃借人にリスクを理解してもらうことが重要です。

 

このように、不動産仲介業者は

物件に関する情報については説明義務がありますが、

賃貸人や賃借人の個人的な財務状況や信用についてまでは説明義務はありません。

 

月刊不動産2024年5月号より抜粋・編集したものです。

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐