ハザードマップ解説Ver.4 「地震災害リスクの傾向(その2)」24年新年号

ハザードマップ解説 Ver.4

 

 

地震災害リスクの傾向(その2)

 

 

全日本不動産協会会員の不動産業者に向けた専門誌の記事を

一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

 

 

 【序章】

 

 

今回は、東京都内における地震災害に関するハザードマップとリスク傾向について、

前回に引き続きご紹介します。

 

 

昔はハザードマップといえば、

紙の地図やPDFファイルのイメージが強かったかもしれません。

 

しかし、今ではパソコンやスマホで簡単にアクセスできる

「デジタルマップ」が主流になっています。

 

これにより、地図を拡大したり、他の地図と見比べたり、

住所検索を使って自分の家や職場がどのようなリスクにさらされているのかを

簡単に調べることができます。

 

 

このデジタルマップの使い勝手は、

以前と比べて飛躍的に向上しており、

見やすさも大幅に改善されています。

 

地震リスクに対する理解を深めるためにも、

ぜひこのようなデジタルハザードマップを活用してみてください。

 

 

【東京都被害想定デジタルマップ】

 

今回も、東京都が提供している「被害想定デジタルマップ」

の解説を引き続きお届けします。

 

このマップは、地震の発生時における様々な被害予測を視覚的に確認できる便利なツールです。

 

 

建物全壊棟数

 

この指標は、地震の震度に応じて全壊すると

予測される建物の数を示しています。

 

特に震度が高く、古い木造住宅が多い地域で全壊棟数が増える傾向があります。

 

例えば、都心南部直下地震の想定では、

隅田川と荒川の間の江東区北部から墨田区、

台東区、荒川区、足立区にかけて全壊棟数が多くなると予測されています。

 

逆に、都市開発が進んで木造住宅が少ない地域では全壊棟数が少なく、

「1棟未満」となる地域もあります。

 

 

 

焼失棟数

 

 

全壊棟数と併せて注目したいのが焼失棟数です。

 

これは、地震発生時に火災が発生し、

焼失する可能性のある建物の数を示しています。

 

建物の構造や出火件数、消火活動の効果などを考慮して算出されています。

 

焼失棟数が多い地域としては、江戸川区一帯や足立区の西新井付近、

大田区から品川区、目黒区、世田谷区にかけての広い範囲が挙げられます。

 

特に、古くからの住宅街では焼失棟数が多くなる傾向が見られます。

 

 

細街路閉塞率

 

 

地震によって倒壊した建物が細い街路を塞いでしまう確率を示す指標が、

細街路閉塞率です。

 

この率が高い地域では、

地震発生後の避難や救助活動に支障が出る可能性があります。

 

特に、建物全壊棟数が多い地域では細街路閉塞率も高くなる傾向があります。

 

具体的には、台東区浅草付近、

杉並区成田東、永福、下高井戸付近などが高い地域とされています。

 

 

 

特定緊急輸送道路沿道建築物

 

 

東京都の耐震化推進条例に基づいて指定された特定緊急輸送道路では、

沿道建築物の耐震性が重要です。

 

このマップでは、全壊が予想される建物の数が

道路延長1kmあたりで示されています。

 

特に首都高速4号新宿線の渋谷区初台付近や、

墨田区両国から江東区亀戸間、

国道15号線の港区新橋から三田間などで耐震性が不十分な建物が多いことが示されています。

 

 

津波被害想定

 

 

東京都内での津波被害は、

品川区立会川付近や大田区平和島付近など一部地域に限られています。

 

都内には津波災害警戒区域は存在せず、

これらの地域を除くと、津波による大きな被害は想定されていません。

 

 

J-SHIS Map

 

 

 「J-SHIS Map(ジェイシスマップ)」は、

30年以内の地震の起こる確率や活断層、

地盤の揺れやすさなど地震の発生等に関する情報が掲載された地図です。

 

 

 

地盤の揺れやすさ

 

 

地震が起きた時、同じ震度でも地域によって

感じる揺れの強さが異なることをご存知でしょうか?

それは、その場所の地盤が揺れやすい」か「揺れにくい」かによるものです。

 

例えば、ある地域では震度5強の揺れであったとしても、

近くの地盤が揺れやすい地域では、

同じ地震で震度6強に感じられることもあります。

 

 

では、どうすれば自分の住んでいる地域の地盤の揺れやすさを確認できるのでしょうか?

 

その一つの方法が、「J-SHIS Map」という地図サービスを利用することです。

 

この地図では、特に「地盤増幅率」という指標で、

地盤の揺れやすさを確認することができます。

 

 

J-SHIS Mapのトップページにアクセスし、

「表層地盤」のタブを選択。

 

地図上で調べたい場所をダブルクリックすると、

その場所の地盤増幅率が表示されます。

 

地盤増幅率は、地震時にどれだけ揺れが増幅されるかを示すもので、

数値が大きいほど揺れやすい地盤であることを意味します。

 

 

具体的には、地盤増幅率が1.8以上なら揺れやすい地盤、

2.3以上であれば特に揺れやすい地盤とされています。

 

一方で、1.2以下なら揺れにくい地盤です。

 

例えば、東京都内では、足立区や江戸川区、荒川区、

墨田区、江東区といった地域が揺れやすい地盤として知られています。

 

 

反対に、武蔵野台地と呼ばれる地域、

例えば中央線沿いの新宿駅から立川、

八王子にかけての地域は、地盤が安定しており、

揺れにくいとされています。

 

ただし、近年の研究では、武蔵野台地の一部でも、

地下に柔らかい層が存在する地域があり、

揺れやすい地盤が分布していることがわかってきました。

 

例えば、世田谷区や目黒区の一部です。

 

これらの地域にお住まいの方は、注意が必要です。

 

 

30年以内に地震が起こる確率

 

次に、地震が30年以内に起こる確率について考えてみましょう。

 

J-SHIS Mapでは、地盤の揺れやすさだけでなく、

特定の場所で地震が起こる確率も確認できます。

 

特に「30年以内に震度6強以上の揺れに見舞われる確率」を確認することができます。

 

 

この確率は、地図上の色で表示され、

濃い色ほど高い確率を示します。

 

例えば、確率が26%と表示された場合、

その地域では「約100年に1回の頻度で大きな地震が発生する」と理解できます。

 

もし確率がさらに高ければ、

その地域に住む人々は一生のうちに1度は大きな地震を経験する可能性があると言えるでしょう。

 

関東地方では、地盤の揺れやすさと地震の発生確率には関連性が見られます。

 

特に、都区部の東側に広がる東京低地では、

地震の発生確率が高く、西に向かうほど低くなる傾向があります。

 

 

まとめ

 

地震は避けられない自然現象ですが、

事前に自分の住む地域の地盤の揺れやすさや地震の発生確率を理解することで、

より安全な生活を送るための備えができます。

 

J-SHIS Mapを活用して、地震に対する理解を深め、

適切な対策を講じることが重要です。

 

ぜひ一度、J-SHIS Mapでお住まいの地域を確認してみてください。

 

 

不動産東京2024年新年号より抜粋・編集したものです。

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐