宅地建物取引業法はどのような理由で作られたのか?2. 度重なる業法改正(4)
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(6) 第6次改正(昭和46年6月16日法律第110号、政府提案)
昭和40年代は高度経済成長がめざましく、
都市部への人ロ集中が更に加速していきました。
国民の所得水準の上昇、
民間金融機関による融資額の増大によって
個人の住宅取得能力が向上し、
住宅に対する需要が旺盛となりました。
これを反映して宅建業者数は増え続け、
昭和45年3月末・・・5万7242(知事免許業者98.8%、個人業者66.6%)
(過去10年間で約2.95倍)
(建設白書昭和48年度版)
宅地建物取引の業務の態様も
従来型の地域密着の小規模な不動産仲介業、
売買業に加え、
大規模・大量の宅地造成・分譲、建売住宅・マンションの建設分譲を行う
開発販売業者(デベロッパー)が大きく成長しました。
昭和47年度及び昭和48年度は着工新設住宅戸数が急増しました。
旺盛な宅地需要に伴い、
宅建業者が買主の資金調達を斡旋したり、
買主に不利な契約内容を押し付ける事態が生じました。
開発分譲では、
宅建業者が工事完了前に十分な保全措置を講じないままに
買主から多額の手付金等の前金を受け取る
いわゆる青田売り (未完成物件の売買)が多く行われました。
こういった中、売主の宅建業者が工事完成前に倒産して
買主が前金を取り戻せず
多大な損害を被るなどの社会問題もおこりました。
またマンション分讓、宅地分讓では、
違約金条項や瑕疵担保責任に関する条項について
買主に一方的に不利な契約内容を強いる取引が広く行われ、
買主が損害を被る紛争も増えました。
消費者保護の機連が高まり、
昭和43年5月30日、
消費者保護基本法 (昭和43年法律第78号) が公布されました。
「改正内容」
① 宅建業法の目的
究極的な目的として「購入者等の利益の保護」と
「宅地及び建物の流通の円滑化」を図ることとし、
「取引の公正の確保」を直接目的に
② 免許基準の強化
宅地建物取引業から悪質な業者を事前に排除するため、
欠格事由の範囲を拡げ、
免許の再取得禁止期間を2年から3年に延長。
法人免許については黒幕の関与を規制するため
役員同様の支配力を有する者も審査対象とする等、
免許基準を一層強化したほか、
名義貸しの禁止規定を新設
⑤ 宅地建物取引主任者制度の改善宅地建物取引主任者の登録制度の新設、
宅地建物取引主任者の職務責任(物件説明書の説明等)の明確化、
都道府県知事による宅地建物取引主任者に対する監督、
宅地建物取引主任者証明書の携帯義務を規定
④ 青田売りに対する規制
広告の開始時期の制限、
重要事項の説明義務、
契約締結等の時期の制限、
前金保全措置を規定するほか、
前金保全措置を行う指定保証機関の規定を創設
⑤ 契約内容の適正化
売主業者の売買契約について不当条項を規制するため
損害賠償額の予定等の制限、
手付の額の制限、
瑕疵担保責任についての特約の制限、
割賦:販売契約における解除等の制限、
所有権留保等の禁止規定を設け、
制限規定に違反する特約を私法上無効とする効力規定を設置
⑥ 監督権限の強化、整備
事務所等以外の案内所に関する届出のほか、
宅建業者に対する監督処分として
指示処分違反に対する業務停止、
特に情状が重いときの免許取消し等の規定を設けたほか、
業務停止期間を6月から1年以内に延長
⑦ 罰則の強化
業務停止命令違反に対する3年以下の懲役、
罰金を新たに追加。
営業保証金不供託での事業開始、
誇大広告等の禁止、不当な履行遅延の禁止、
信用供与の禁止の違反行為に対し
6月以下の懲役を加重し罰則を強化
(7) 第7次改正 (昭和47年6月24日法律第100号、 議員提案)
営業保証金の額を大幅に引上げるとともに、
消費者の利益保護と中小の宅建業者の経済的負担の軽減を図るため、
営業保証金制度の代替的なものとして、
宅建業者が社員(構成員)となる
社団法人宅地建物取引業保証協会を設立し、
業界の集団保証として弁済業務保証金制度が新設されました。
参考文献:国立国会図書館三訂版「逐条解説」宅地建物取引業法より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐