不動産仲介業務の現状と課題 3.不動産仲介契約とは(その1)
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不動産仲介業務の現状と課題
1 仲介と媒介
(1) 仲介
ア 仲介は、あっせん (斡旋)、周旋、仲立とも呼ばれ、
古くは口入れ(口入、くちいれ、 くにゅう)という表現もありました。
仲介は、一般に仲介人が当事者双方の間に立って契約の成立に向けて
“取り持ち”、“口利き”をすることを言います。
不動産仲介とは、
仲介業者が売主から物件の売却を依頼されたり、
買主から物件を探すよう依頼され、
依頼者のために奔走します。
売主と買主との間で交渉して
契約の成立 (これを 「成約」という。)に向けてあっせんし、
その仲介により成約に至れば、
委託者に対し報酬を請求することができる取引形態を言います。
イ 宅建業法は、
宅地建物の売買・交換・貸借の「媒介」 (2条2号)、「媒介の契約」、
「媒介契約」(34条の2) の用語を使い、
商法は仲立営業に関する規定の中で
「他人間の商行為の媒介」 (商法543条) との用語を使いますが、
我が国の民法には 「媒介」、「仲介」に関する用語や規定はありません。
また、民商法を中心に関係する学術用語を
くまなく取り上げて解説したことで定評のある
民事法学辞典上下巻 (昭和35年12月、有斐閣)には
「仲立営業」、「媒介」の用語については
解説されているものの「仲介」は
事項索引にすら見当たりません。
しかし、不動産取引実務では、
「媒介」や「不動産 媒介」ではなく
「仲介」、「不動産仲介」という用語が
長年にわたって広く用いられ、
昭和60年以降の裁判例では
「媒介」、「媒介契約」という用語が散見されるようになったものの、
「仲介」、「仲介契約」、「媒介」、「媒介契「約」 等と表現し必ずしも用語は統一されていません。
ウ 明治39年頃から昭和5年頃に不動産売買、
貸借のあっせんを府県令で取り締まった取締規則をみると、
「周旋営業」、「紹介営業」よりも「不動産仲介業」、
「仲介業者」の用語をもって定めたものが多く、
昭和9年7月に全国農工銀行同盟会が
内務省に提出するためまとめた
不動産仲立人法立案参考資料では
「不動産仲介業取締規則」との題名が付されています。
その後、昭和16年以降に定められた
「不動産等仲介業取締規則」(昭和16年8 月5日大阪府令第59号)、
「不動産等仲介業及管理業取締規則」(昭和18年 1月6日兵庫県令第1号)等も
「仲介業」、「仲介業者」の用語を用いており、
これが取引実務でも一般に定着していたものと考えられます。
(2) 媒介と商事仲立と民事仲立
ア 媒介とは、他人の間に立って、
両者を当事者とする法律行為が
成立するように尽力する事実行為を言います。
媒介契約とは、
他人間の法律行為の成立に向けて媒介することを
引き受ける契約のことを言います。
イ商法では、他人間の商行為の媒介をなすことを
業とする者を仲立人(商法543条)と言います。
仲立人が商行為の媒介を行う場合は、
商事仲立(仲立営業)と言います。
他人間の商行為以外の法律行為
(例えば非商人間の非投機的な宅地建物の売買、貸借)
の媒介を業として行う場合については、
商法にも民法にも規定はありませんが、
これを「民事仲立」、
これを業とする者を「民事仲立人」と呼びます。
ウ 不動産仲介契約は、
宅地建物の売買・貸借等の媒介を業とする宅建業者が
商行為の媒介に限らず、
商行為以外の法律行為の媒介をも
行う契約であるから民事仲立であると解されています。
「仲介」、「不動産仲介」は、
法令用語としては使われていないものの、
不動産取引における「仲介」は
「媒介」と同義と理解して差し支えありません。
なお、契約法に関する他の書籍では、
仲介は媒介と代理を含む広い意味に
使っているものもありますが、
どのような根拠に基づいているかは示されていません。
我が国の不動産取引では、
「仲介」は「代理」とは
異なる取引形態として位置づけられており、
「代理」を含む意味で
「仲介」 という用語が使われているとはいえず、
取引の実態にそぐわない記述です。
(3) 法令用語の使い方
旧証券取引法第6章 「仲介」、
旧商品取引所法 97条の17にいう「仲介」は、
当事者の申立てにより
第三者機関が当事者の間に立って
紛争解決に尽力あっせんする行為の意味で使われています。
商法543条にいう「媒介」は
第三者が他人間に立って
法律行為が成立するように尽力する意味であり、
「取引の代理又は媒介」(商法27条、31条)、
「商品の販売又はその媒介」(商法29条)、
保険業法 2条26号にいう
「保険契約の締結の代理又は媒介」と同義です。
また、ドイツ民法の仲立契約の規定にあるVermittelung は
「媒介」という訳語が当てられています。
宅建業法が制定された当時も不動産仲介が
一般になじみのある表現でしたが、
旧証券取引法等にいう「仲介」と区別すること、
商法に「媒介」が使われていたことから「媒介」を使ったようです。
参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐