不動産仲介業務の現状と課題 不動產仲介契約とは(その4)
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4 不動産仲介契約の法的性質
(1) 準委任
不動産仲介契約は、
売買等の契約の成立に向けて
あっせんする事実行為の委託であり、
準委任と解されています。
準委任とは、
ある契約当事者が他方に対し、
自己の権利や義務を一部委託する
契約形態を指します。
不動産仲介契約は準委任契約の一種であり、
その性質や法的地位について多くの法学者や判例が議論しています。
債権法改正の基本方針では、
媒介契約を「委託者と媒介者の間で、
委託者と第三者との法律行為が成立するように尽力する有償の準委任」
と定義する提案がなされています。
本項の参考文献:
明石三郎「不動産仲介業者の法的地位について」民商法
民法(債権法)改正検討員会編・詳解債権法改正の基本方針
(2) 諾成・不要式契約
仲介契約は口頭の意思表示によって成立する諾成・不要式の契約です。
ただし、宅地建物の売買・交換の媒介に関しては、
宅建業者が委託者と仲介契約を締結する際には
書面を作成し交付する義務があります。
これは仲介契約を書面で成立させる要式契約ではなく、
契約内容を明確にして紛争を防止するための義務です。
民法では契約は原則として
口頭で成立する諾成・不要式契約とされていますが、
宅建業法によって
宅地建物の売買・交換の媒介に関しては
例外的に書面交付の義務が設けられています。
これは法体系上の配慮から行われたもので、
民事一般法である民法の例外を
適切に規制するためのものです。
なお、媒介契約の書面交付義務は
宅地建物の売買・交換の媒介に限られており、
貸借の媒介には適用されません。
(3)有償契約
不動産の仲介契約は
準委任と解釈されていますが、
無償の委任に関する民法の規定は適用されません。
不動産仲介業者に仲介を
委託すること自体、
報酬の支払いに関する暗黙の合意があり、
不動産の売買や賃貸借などの契約の成立に向けて尽力する行為は
「仲立ちに関する行為」とされます。
このため、仲介業者は商人とみなされ、
報酬請求権を取得します。
報酬請求権は、仲介業者の契約成立による対価として発生します。
報酬は、仲介業者が成約させた行為に対する対価であり、
仲介行為そのものの対価ではありません。
報酬の額は国土交通大臣によって告示されますが、
告示は仲介業者が受領できる最高限度額を定めるものであり、
必ずしも最高限度額を要求できるわけではありません。
報酬の額は、成立した契約の取引価額、
契約成立の経緯、費用、仲介の難易度、
仲介業務に費した期間や労力など、
様々な要素を考慮して算定されます。
(4) 双務契約
「双務契約」とは、契約当事者が
相互に対価的な意義を有する債務を負担する契約であり、
牽連関係があることを指します。
不動産仲介契約は、
仲介業者の仲介行為によって売買等の契約が成立すれば、
仲介報酬が支払われるという対価関係に立つため、
双務契約と見なされます。
報酬支払いは、
仲介業者の仲介行為によって
売買等の契約が成立して初めて発生するため、
仲介は請負契約に類似しています。
しかし、請負契約では仕事の完成と報酬の支払いが
対価的に関連しており、
請負契約の成立と同時に請負人には
仕事の完了義務が生じます。
一方、仲介契約では、
仲介業者がどれだけ努力しても
売買等の契約が成立するかは常に不確実であり、
委託者が成約を希望する物件を紹介したとしても、
最終的な成約は当事者の自由な意思に委ねられます。
そのため、委託者は仲介業者に対して
成約を強制することはできず、
仲介業者が契約成立を実現できなかった場合でも、
債務不履行には該当しないとされます。
(5) 一回的契約
仲介契約は一回的な契約関係であるのか、
それとも継続的な契約関係であるのかは
明確に定義されていない。
通常、賃貸借や売買といった契約形態では、
貸主が一定期間賃借人に物件を提供する貸借型契約の特徴があり、
物件の使用収益は時間の経過とともに行われます。
一方、売買は売主による
財産権の移転と買主による金銭支払いという
一回的な給付に焦点を当て、
一回的契約関係とされます。
金銭支払という一回的な給付に着目して一回的契約関係と言われる
仲介契約 売買契約
成立 成立
◯ ————————→ ◯
仲介業者:成約努力義務⇩
⇩
委託者
報酬支払義務の発生
仲介を継続的契約と見なす考え方は、
仲介業者が
一定の時間的な経過の下で
契約成立に向けて努力する行為として注目しています。
しかし、仲介業者の給付は仲介行為ではなく
「契約の成立」にあり、
これは売買や賃貸借の契約当事者間の意思によって
一回的に行われるものであり、
報酬はこの契約の成立に対する委託者の
一回的な対価として支払われるものです。
そのため、仲介契約の性質は
一回的な契約と解釈すべきです。
明石氏の研究では、
仲介契約の給付が売買成立という
一回的な給付であり、
建築請負契約の工事完成という
一回的な給付を目的とすることと類似しており、
仲介契約の解除効果や
報酬請求権の規定について異なる見解を示しています。
また、東京地判の判例では、
仲介契約は売買等の契約成立を終局の目的とする
一回的な給付を目的とするため、
委任が途中で終了した場合の
報酬請求権の規定は適用されないとされています。
参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より
筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐