不動産仲介業務の現状と課題  不動產仲介契約とは(その6)

 

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(2)仲介と商法の規定

 

ア 商法4条1項、 商法502条11号

 

不動産仲介は

仲介(媒介)の対象である不動産売買、

賃貸借等が必ずしも商行為に限られるものではないことから民事仲立です。

 

ただし、宅地建物の売買・賃貸借等の仲介を営業としてするときは

営業的商行為となり(商法502条11号) 宅建業者は、

これを業として営むことから商人に該当し、

商人としての規律を受けます。

 

 

【最判昭44.6.26民集23巻7号1264頁】

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一般に、宅建業者は、

商法543条にいう「他人間ノ商行為ノ媒介」 を業とする者ではないから、

いわゆる商事仲立人ではなく、

民事仲立人ではあるが、

同法502条11号にいう「仲立ニ関スル行為」を営業とする者であるから

同法4条1項の定めるところにより商人であることはいうまでもない。

 

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イ 商法512条 (報酬請求権)

仲介業者は商人であるため (商法502条11号、4条1項)、

仲介業者の仲介によって売買等の契約が成立した場合、

報酬額を支払う旨の合意(報酬契約)がなくても、

仲介業者は、委託者に対し商法512条に基づき報酬請求権を有します

(東京地判昭32. 8. 15、東京地判昭33.4.22、最判昭38. 2. 12、大阪高判41. 6. 24)

 

なお、商法512条に基づいて報酬請求するためには、

仲介業者の仲介によって

当事者間に売買等の契約が成立していることが必要であって、

仲介業者の仲介行為があっても

売買等の契約が不成立に終われば報酬請求権は発生しません

(東京地判昭35.11.9、東京地判昭36.5.31、東京地判昭36.10.20、

東京地判昭39. 5. 19、大阪地判昭44. 11. 19、京都地判昭44. 1. 17 本書1135頁、

大阪地判昭58.7.14)。

 

【最判昭43.4.2民集22巻4号803頁】―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

* 商法512条は、

商人がその営業の範囲内の行為をすることを委託されて、

その行為をした場合において、

その委託契約に報酬についての定めがないときは、

商人は、委託者に対し相当の報酬を請求できる趣旨に解すべきである。

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* 非委託者に対する報酬請求の可否

 

仲介業者と委託者との間で

明示または黙示の仲介契約が成立する場合は、

仲介業者が委託者のために仲介行為をして売買等の契約が成立すれば、

「他人のために」 した行為をしたとして報酬請求権が認められます (商法512条)。

 

ところが、仲介契約の成立が認められない場合、

事務管理によるものが

「他人のために」した行為として認められるかどうかについては、

非委託者に対する報酬請求の可否の問題であり、

商法512条に基づいて報酬請求するには、

宅建業者または仲介業者であることを

当事者において認識していたことが必要です

(仲介業者であることが不告知の事案について広島簡判昭28. 12, 21)。

 

ウ 商法550条1項の類推適用

不動産仲介契約は商事仲立ではなく民事仲立であるが、

仲立の対象が商行為に限定されないというだけであること、

受託者である仲介業者が成約に向けてあっせん尽力し

委託者が成約に対し報酬を支払うとの仲立契約の性質に類似していることから

商法550条1項が類推適用されます。

 

したがって、仲介業者が報酬請求するには、

仲介業者の仲介によって

当事者間に売買等の契約が成立していることが必要です。

 

仲介業者の仲介行為があっても

売買等の契約が不成立に終われば報酬請求権は発生しません

(広島高裁岡山支判昭和33.12.26、東京地判昭35.11. 9、

東京地判昭36.5.31、東京地判昭36. 10.20、東京高判昭39.5.19、

横浜地判昭40.4.22、大阪地判昭44.11.19、東京地判昭50.12.24、

東京地判昭52.12.7、大阪地判昭58.7.14)。

 

エ 商法550条2項

 

当事者の一方から売買契約等の仲介の委託を受けた仲介業者が、

委託を受けない相手方との間で

取引交渉等仲介行為をなした結果、

売買等の契約が成立した場合、

委託を受けない相手方に対して

商法550条2項の類推適用に基づき

報酬請求することができるかという議論があります。

 

オ 商法514条(商事法定利率)

 

仲介業者の報酬請求権は、

仲介業者と委託者の仲介契約に基づいて生じた債権であり、

「商行為によって生じた債権」 (商法522条、商事債権)に当たるため、

報酬額については、

その支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金を

附帯請求することができます。

 

要件事実として、

宅建業者であること(商人性)を主張する必要があります。

 

カ 商法522条(商事消滅時効)

仲介業者の委託者に対する報酬請求権は

「商行為によって生じた債権」 (商法522条)に当たり、

5年間行使しないときは時効によって消滅します。

 

 

参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より

 

 

 

 

筆者:大脇和彦プロフィール

愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐