特集Ver.2「地域経済低迷からの脱却~島根県松江市~」

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一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

 

【序章】

 

― 「稼ぐ力のあるまち」へ期待を集める「まつくる」の手腕 ―

 

地元住民と力を合わせ、

中心市街地活性化のプロデュースを図る

株式会社まつくる(以降:まつくる)。

 

同社はいま、「稼ぐ力のあるまち」をテーマに掲げ、

商店街と協同してのイベント開催や空き家の利活用等、

まちの賑わい創出に注力しています。

 

 

【行政と住民の間に立つ中間支援組織として誕生】

 

島根県松江市の魅力とまつくるの挑戦

 

松江市は、美しい自然と豊かな文化が調和した、

世界に誇る国際観光都市です。

 

そんな松江市にある「白潟地区」は、

大橋川や宍道湖の近くにあり、

JR松江駅と松江城の中間に位置しています。

 

まつくるの誕生と目的

 

まつくるは、2022年10月19日に設立されました。

 

松江市に本店を置く山陰合同銀行、

島根銀行、しまね信用金庫、

そしてTSKさんいん中央テレビなどの地元企業が共同出資し、

後に松江商工会議所も参加しました。

 

設立の背景について、

専務執行役員の糸川孝一氏は

「中心市街地活性化を迅速に進めるため」と説明します。

 

これまで地域課題の解決は行政任せで、

物事がスムーズに進まないことが多かったため、

民間企業と地域住民、

行政の間に立つ中間支援組織として

まつくるが設立されたのです。

 

白潟地区の課題とまつくるの役割

 

白潟地区には松江本町商店街や松江天神商店街などがあり、

江戸時代から続く老舗も存在します。

 

昭和から平成初期にかけては

「商業で栄えた町」として知られていましたが、

近年では店主の高齢化や後継者不足により

商店街が衰退し、

地域全体が活気を失ってしまいました。

 

未来への取り組み

 

糸川氏たちは、商店街を再び活気づけるために

「まつくる」を事務局として、

地元事業者、不動産業者、設計士などが集まる

協議会を結成しました。

 

テーマは「稼ぐ力のあるまち」。

 

民間主導で取り組むべきことや

5年後のまちのビジョンをまとめた

「まつえ白潟エリア賑わい具体化構想」を作成し、

松江市と協力しながら実現を目指しています。

 

 

来場者データを次につなぐ

 

【来場者データを次につなぐDXを活用した取り組み】

 

30年ぶりの「まつえ土曜夜市」が復活

 

まつくるの構想が早速実現し、

30年ぶりに「まつえ土曜夜市」が復活しました。

 

土曜夜市は昭和の時代に商店街が

中心となって開催され、

土曜の夜に多くの店が出店する“夏の風物詩”として

地域に親しまれていました。

 

しかし、商店街の高齢化や店舗の撤退が進む中で、

開催が難しくなり、

いつしか忘れ去られてしまいました。

 

 

 

地元の声を活かした復活

 

まつくるのプランナー、万代繁優氏は

「会社設立後、地域の賑わいを取り戻すために

『白潟天神昭和トラベル』と題して、

地元の人たち100人にインタビューを実施しました。

 

その中で多くの人が懐かしむ声を上げたのが土曜夜市でした」

と語ります。

 

インタビューの回答者は主に

40代後半以上の世代で、

彼らは土曜夜市の楽しさを

若い世代にも伝えたいと考えていました。

 

 

イベントの大成功

 

2023年6月から10月までの毎月1回

土曜日に開催された土曜夜市には、

合計8万1000人の来場者が訪れ、

大盛況となりました。

 

このイベントの成功は、

地元住民の期待と願いを実現した結果でした。

 

土曜夜市の復活は地域に新たな活気をもたらし、

今後のさらなる賑わい創出への大きな一歩となりました。

 

 

土曜夜市の詳細と未来への展望

 

今回の土曜夜市では

周辺道路が歩行者天国として整備され、

50店舗以上のキッチンカーや露店が並びました。

 

また、商店街の空き店舗を出店希望者に使用してもらい、

白潟エリアでの商売の楽しさを体験する試みも行われました。

 

 

イベントの狙いと成功

 

糸川氏は

「土曜夜市の狙いは賑わいを創出すると同時に、

『ここで商売をしたい』と思ってもらえるようにすることでした

と語ります。

 

土地や店舗の所有者が高齢で商売が難しい場合、

不動産を貸し出すことも視野に入れています。

 

これまで「自分たちの代で店を畳んでもいい」

と話していた店主たちも、

土曜夜市をきっかけに

再びチャレンジしようという意欲を持つようになりました。

 

 

未来への展望

 

土曜夜市の復活は大成功を収め、

多くの人々から翌年以降の開催を望む声が寄せられました。

 

その結果、2024年も5月、6月、8月、9月の第4土曜日に

土曜夜市が再び開催されることが決定しました。

 

 

公式アプリでさらに便利に!まつくるの取り組み

 

まつくるは土曜夜市の開催に合わせて、

公式アプリを開発・導入しました。

 

このアプリには、イベントの最新情報、

商店街マップ、出店情報、スタンプラリー、

引き換えクーポンなど、多彩な機能があり、

来場者の満足度を高めています。

 

 

見込客リストの作成も視野に

 

糸川氏はアプリ導入のもうひとつの狙いについて、

「見込客リストの作成」だと話します。

 

「土曜夜市の開催にあたり、

多くの人がアプリを利用してくれました。

アプリを利用するためには、

ダウンロード後にアカウントを作成する必要がありますが、

このアカウント登録者が今後の見込客となります。

 

商店街の最新情報などをプッシュ通知で発信できるので、

例えば新メニューの情報を会員に届けることができます。

 

これまでの常連客に加えて、

新たに集客したお客様も

商店街全体のファンにすることができます」と語ります。

 

 

継続的なイベントとアプリの活用

 

まつくるは土曜夜市だけでなく、

宍道湖の夕日を活かしたイベントなども実施しており、

今後もアプリを通じたファンづくりを行いながら

データを活用して、

さらなる賑わい創出を目指していきます。

 

 

 

【賑わい創出に欠かせない不動産流通の活性化】

 

 

空き家問題に取り組むまつくるの新たな挑戦

 

白潟地区は空き家や空き地の増加が著しく、

「空洞化」が懸念されていました。

 

まつくるはこの問題にいち早く取り組んでいます。

 

 

老舗呉服店のリノベーション

 

まつくるの万代繁優氏は、

「天神町商店街にあった老舗呉服店が廃業し、

空きビルになっていました。

店主と相談した後、

当社がそのビルを借り受けてリノベーションを施しました」

と話します。

 

リノベーションの資金は

経済産業省の地域商業機能複合化推進事業の補助金を

活用しています。

 

 

新たなテナントの誘致

 

リノベーションされたビルには早々に

入居店舗・企業が決まりました。

 

1階には郷土料理店がオープンし、

1階奥と2階には名古屋大学発のベンチャー企業、

郷土料理店の2階部分にはIT企業が入る予定です。

 

改修も終了間近で、

新たなまちの顔としてお披露目されることになります。

 

まつくるの中間支援組織としての役割

 

まつくるは設立当初から掲げていた

「中間支援組織」としての役割をしっかりと果たしています。

 

糸川氏は「賑わいを創出するためには、

不動産の流動化が欠かせません。

そのためには、地元の不動産事業者と協力し、

使われていない不動産をどう活用するかがポイントとなります」

と語ります。

 

 

和多見町の老舗旅館の活用計画

 

進行中の計画として、

和多見町にある老舗旅館をまつくるが買い取り、

外国人が住める居住施設に改築する案があります。

 

松江市は、プログラミング言語

「Ruby」の開発者がいることから、

Rubyを核とする産業振興に力を入れており、

IT大国インドとの交流が盛んです。

 

そのため、多くのインド人エンジニアが松江に住んでいます。

 

 

外国人エンジニアの居住地確保

 

しかし、外国人居住者に対するトラブルを懸念し、

貸し渋るオーナーが多く、

エンジニアの居住地確保が課題となっています。

 

この課題を解決するために、

まつくるは不動産事業者と協力して取り組んでいます。

 

 

まつくる、都市再生推進法人に指定される

 

設立からわずか1年足らずで

賑わい創出に尽力してきた

まつくるの功績が松江市に高く評価され、

2023年11月に山陰地区初の

「都市再生推進法人」に指定されました。

 

 

都市再生推進法人のメリット

 

この指定は、都市再生特別措置法に基づき、

市町村からの信頼と認知度を高めるだけでなく、

まつくるがまちづくりに関する公的な計画、

つまり都市再生整備計画の作成や変更を

市町村に提案できるようになるというメリットがあります。

 

 

まつくるの未来への展望

 

糸川氏は、

「私たちの活動が評価されたことを非常にうれしく思います。

 

白潟地区のように活気を失った地方でも

努力すれば気運は高まります。

 

地元商店街の店主たちの士気も上がり、

松江には賑わいを取り戻せる可能性がまだまだあります。

 

その一つひとつをクリアにし、

‘稼げる力のあるまち’ をつくりあげていきたいです」

と語りました。

 

月刊不動産2024年5月号より抜粋・編集したものです。

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐