特集No.4~不動産業界のカスハラの傾向と対策~

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一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

 

【序章】

 

 

顧客からの暴言や不当な要求など

「カスタマーハラスメント」と呼ばれる迷惑行為が増え、

社会問題となっています。

 

不動産業界でも国土交通省が

2023年9月にマンション標準管理委託契約書を改訂し、

カスハラ対応の規定等を追加しました。

 

ここでは、事例を用いてどのようにカスハラが発生し

深刻化していくのかを探り、傾向と対策を紹介します。

 

 

【事例】

 

 

不動産会社の従業員Aは、

オフィスを借りたいという会社経営者Bの担当です。

 

Bの希望どおりの物件が見つかり、

賃貸借契約締結となりましたが、

あとになってAは、

重要事項として説明すべき項目が

1つ漏れていたことに気がつきました。

 

Aは謝罪のためオフィスに赴きましたが、

Bが忙しかったため、

その日の夜にメッセンジャーアプリで謝罪しました。

 

 

 

― 翌日 ―

 

 

 

Aは再びBを訪問し謝罪しましたが、

Bは話をはぐらかし、

謝罪を受け入れるとの発言をしませんでした。

 

そこで、Aは、Bと互いの家族や趣味の話をしてよい関係を築こうとし、

やり取りを始めました。

 

 

― 数日後 ―

 

 

AとBのやり取りは続いており、

Bは「最近1人になり寂しい」などと連絡。

 

Aは困惑しましたが、

Bが謝罪を受け入れるまでは対応しようと考え、

日中だけでなく夜も対応を続けました。

 

 

― 1週間後 ー

 

謝罪を受け入れるというBからの返事は一度もないまま、

重説の話はいつの間にかなくなり、

AとBのプライベートなやり取りが続きました。

 

 

- 1ヶ月後 ―

 

Aは、Bとのやり取りをやめたくてもやめられませんでした。

 

そのうちAは不眠になり、鬱になってしまいました。

 

【カスタマーハラスメントの具体的対策の必要性】

 

カスタマーハラスメントって何?

 

カスタマーハラスメントとは、簡単に言うと、

顧客からの無理な要求や嫌がらせによって、

働いている人の仕事環境が悪くなることを指します。

 

例えば、大声で怒鳴られたり、

理不尽な要求を繰り返されたりすることです。

 

こういった行為は、

業界や会社の文化によって感じ方が違うかもしれません。

 

だからこそ、どのような行動がカスハラに当たるのか、

あらかじめ会社ごとにルールを決めておくことが大切です。

 

このルールがあれば、社員全員が同じ認識を持ち、

対応方法も統一できます。

 

カスハラってどんな場合?

 

カスハラは、はっきりと悪い行為とされるものもあれば、

ちょっと分かりにくいものもあります。

 

たとえば、暴力を振るうのは明らかに許されませんが、

ちょっとした要求が行き過ぎてしまった場合、

それをカスハラと判断するのは難しいかもしれません。

 

しかし、カスハラは放っておくとどんどん悪化していくことが多いです。

 

だから、ちょっとしたことであっても、

早めに対応することが重要です。

 

そのためにも、どんな行為がカスハラに当たるのか、

しっかりと基準を作り、

従業員にもお客様にも理解してもらうことが必要です。

 

どう対応すればいいの?

 

カスハラに対処するために、

まずは会社や店舗ごとに「カスハラとは何か」を明確にしましょう。

 

そして、社員全員がこのルールを理解し、

日々の仕事の中で守れるようにすることが大切です。

 

また、お客様にもこのルールを分かりやすく伝えることで、

無理な要求を避けることができます。

 

【カスハラ放置は会社の安全配慮義務違反】

会社には従業員を守る義務があります

 

労働契約法第5条では、会社(使用者)は、

従業員が安全に働ける環境を提供する義務があるとされています。

 

これには、従業員の生命や身体だけでなく、

精神的な安全も含まれます。

 

簡単に言うと、会社は従業員が安心して働けるように、

いろいろと気をつけなければならないのです。

カスハラを無視するとどうなる?

 

もし会社がカスハラを放置すると、

次のような問題が発生する可能性があります:

 

 

  1. 従業員からの損害賠償請求:従業員がカスハラによって精神的または身体的にダメージを受けた場合、会社はその損害を賠償しなければならなくなることがあります。たとえば、顧客からの過剰な要求や暴言によって従業員がストレスを感じ、健康を害した場合、その責任は会社にもあるとされることがあります。
  2. 監督官庁からの指導や業務停止:労働契約法第5条に違反すると、会社は「他の法令違反」として扱われます。これは宅地建物取引業法65条1項3号に該当し、監督官庁から指導を受けたり、最悪の場合、業務停止命令を受けることもあります。つまり、カスハラを放置することで、会社の運営自体が危機にさらされる可能性があるのです。

 


忙しい毎日でも、相談する勇気を持とう


一人で抱え込まないで


仕事が忙しいと、どうしても自分で問題を解決しようとすることが多くなります。

 

特に、自分が何かミスをしてしまった場合には、

なんとか自力で挽回しようとしますし、

「これは自分の責任だ」と自分を責めてしまうこともあります。

 

でも、覚えておいてほしいのは、困ったときに相談することは、

決して恥ずかしいことではないということです。

 

自分の限界を見極めよう

 

お客様からの要求に対して、

「何とか自分の力で対応しなければ」と思うのは自然なことです。

 

しかし、もしその過程で不眠や体調不良といった身体のサインが出てきたら、

それは「自分の限界」を知らせるサインです。

 

無理をして健康を害する前に、

「本当にここまで頑張るべきなのか」と立ち止まって考えてみてください。

 

 

自分を責めないで

 

カスタマーハラスメント(カスハラ)に限らず、

ハラスメントに関する相談を受ける中でよく感じるのは、

相談者が自分を責める傾向にあることです。

 

「自分がもっと頑張ればよかった」「自分のせいでこうなったんだ」と

思い込んでしまう人が多いのです。

 

でも、覚えていてください。ハラスメントを受けるのは、

あなたが悪いわけではありません。

 

 

会社も対応を強化すべし

 

会社としても、従業員がこうした悩みを抱えたときに、

適切に対応できるように準備しておくことが大切です。

 

従業員がうつ病を発症してから対応するのでは遅いのです。

 

最近、東京都がカスハラに対する条例を制定するという報道もありました。

 

これに対応するためにも、

会社としてもカスハラに対する対応策を

しっかりと整備しておくことをお勧めします。

 

 

【事例の検討】

 

カスタマーハラスメントの事例から学ぶ、会社の介入タイミング

 

事例の概要

 

まず、ある不動産会社での事例を振り返ります。

 

・Aさん:会社の社員で、お客様対応をしている。

 

・Bさん: Aさんのお客様。

 

Aさんが重要な説明(重説)でミスをしてしまいました。

 

このミスに対してBさんは非常に不満を抱き、

謝罪を受け入れる様子もなく、Aさんに対して連日の連絡や訪問を要求しました。

 

また、非常に個人的な内容のメッセージを送り続けました。

 

これはAさんにとって大きな負担となり、

精神的にも非常にストレスがかかる状況でした。

 

 

どこで介入すべきだったか?

 

このような状況で、会社はどの時点で介入すべきだったのでしょうか?

考えるべきポイントは次の通りです:

 

1.早い段階での介入が必要:

 

Aさんがミスをした直後、Bさんが不満を示し、

連絡や訪問が過剰になった時点で、

会社はすぐに状況を把握し、介入するべきでした。

 

できるだけ早く、問題がエスカレートする前に会社が関与することが重要です。

 

 

2.カスハラの兆候を見逃さない

 

Bさんの行動が単なる不満の表現を超えて、

個人的なメッセージや過度な接触に発展した時点で、

これはカスハラに該当する可能性があります。

 

この段階で、会社はAさんをサポートし、

Bさんとの直接のやり取りを制限するべきでした。

 

 

3.社員の健康状態を常に気にかける

 

Aさんが体調を崩したり、ストレスの兆候を示している場合、

それはすでに遅いかもしれません。

 

会社は、社員が健康を害する前に、

定期的に状況をチェックし、

問題が発生したらすぐに対応できる体制を整えておく必要があります。

 

 

会社の責任と対応策

 

この事例から学ぶべき重要な教訓は、以下の通りです:

 

・事前にマニュアルを整備する

 

カスハラに対する具体的な対応策や

マニュアルを事前に準備しておくことが不可欠です。

 

社員が困ったときにすぐに相談できる窓口や、

 

どのように対応すべきかを明確にしておくことで、問題が深刻化するのを防げます。

 

・社員に任せきりにしない

 

問題が発生した際、会社は社員に全てを任せきりにするのではなく、

積極的に介入し、サポートする姿勢を持つべきです。

 

Aさんが自分一人で問題を解決しようとしても、

限界があることを理解し、会社全体で支援する体制を整えることが大切です。

 

 

・迅速な介入がカスハラを防ぐ

カスハラに発展する前に、早期に会社が介入することで、

問題を未然に防ぐことができます。

 

この事例では、Bさんが過度な要求をし始めた当日か翌日には、

会社が介入するのが適切だったといえます。

 

 

【まとめ】

 

カスハラは、放置すると社員の健康や精神状態に大きな悪影響を及ぼし、

結果的に会社にも大きなリスクをもたらします。

 

問題が小さなうちに早期に対応することが、

社員を守り、会社を守る最善の方法です。

 

 

月刊不動産2024年6月号より抜粋・編集したものです。

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐