不動産Q&Aシリーズ 税務相談Vo.2_ 「自宅の土地と建物の所有者が異なる場合の3, 000万円の特別控除の取扱い」24年6月号
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~自宅の土地と建物の所有者が異なる場合の3, 000万円の特別控除の取扱い~
― QUESTION ―
夫が自宅を所有し、敷地を夫婦で共有しています。
近々、その自宅不動産を譲渡したいと考えていますが、
この場合の所得税の3,000万円の特別控除(以下「特別控除」)の取扱いについて教えてください。
― ANSWER ―
特別控除額について、
居住用家屋の所有者と敷地の所有者との合計は3,000万円が限度です。
ただし、敷地のみの所有者(妻)が受けられる特別控除額は、
家屋の所有者(夫)が受ける特別控除額を差し引いた残りの額となります。
【1. 特別控除の概要】
特別控除とは、個人が自分の居住用の不動産を譲渡した場合に適用される税制の特例です。
この特別控除を利用することで、譲渡所得税の計算上、
最大で3,000万円までの金額を譲渡所得から控除することができます
(租税特別措置法第35条1項)。
特別控除の対象となる居住用の不動産には、以下のようなものがあります:
① 自分が実際に居住している家屋
(ただし、一部が他の目的で使用されている場合は、
居住に使われている部分に限定されます。
また、複数の居住用家屋がある場合は、主に居住しているものに限ります)。
② 居住用でなくなった後、その後3年を経過した年の12月31日までに譲渡した家屋。
③ 上記の家屋と一緒に譲渡した土地などの敷地。
④ 災害によって家屋が失われた場合、
その家屋に住まなくなった後3年を経過した年の
12月31日までに譲渡した土地などの敷地(原則)。
これらの条件を満たす場合に、
特別控除の対象となります。
特別控除は、譲渡所得税の計算を軽減するための税制であり、
居住用の不動産を譲渡する際の税務上の優遇措置として利用されます。
【2. 居住用家屋の所有者と土地の所有者が異なる場合の特別控除の取扱い】
(1)特別控除の適用を受けることができる場合
居住用家屋の所有者以外の者が、
その家屋の敷地として使用されている土地を所有しており、
その土地を含む家屋の長期譲渡所得または短期譲渡所得が
3,000万円の特別控除額に満たない場合、
その満たない金額は次の条件をすべて満たす場合に限り、
その土地の所有者の譲渡所得から控除することができます(租税特別措置法通達35-4)。
ア.その家屋とともに、その敷地の土地が譲渡されたこと。
イ.その家屋の所有者とその土地の所有者が親族関係であり、かつ、生計を一にしていること。
ウ.その土地の所有者が、その家屋を居住用として使用していること。
(2)控除額の計算
特別控除の適用を受ける場合、
控除額は居住用家屋の所有者と敷地の所有者と合わせて
最大で3,000万円が上限です。
この場合、控除額の差し引き順序は、
まず家屋の所有者が受け取り、
その後に敷地の所有者が受け取ることになります。
つまり、敷地の所有者が受け取れる控除額は、
3,000万円から家屋の所有者が受ける控除額を差し引いた残りの金額となります。
(3)適用要件の判定時期
特別控除の適用において、
(1)の譲渡した家屋の所有者と譲渡した土地の所有者が親族関係であり、
かつ、生計を一にしているか、
同居しているかどうかの判定は、
原則としてその家屋が譲渡された時点の状況によって行われます。
ただし、【1】①の場合はその家屋が
居住用として使用されなくなった日から
3年を経過する日の12月31日までの間に譲渡された場合、
そして【1】②の場合はその家屋が居住用として
使用されなくなった直前の状況によって判定されます。
(4)特別控除の取扱いが認められた理由
特別控除は、元々「所有者が居住用に使用している家屋」を対象とする特例です。
そのため、譲渡された家屋の所有者と
その敷地の所有者が異なる場合は通常特別控除が適用されません。
しかし、譲渡家屋の所有者と敷地の所有者が夫婦などの親族関係であり、
かつ、同居して生計を一にしている場合、
その家屋と敷地は一つの生活共同体の居住用財産とみなされることがあります。
このような理由から、国税庁は措法通達35-4に基づき、
規定された条件を全て満たす場合には、
敷地等の所有者の譲渡所得に対しても特別控除の適用を認めています。
月刊不動産2024年6月号より抜粋・編集
愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐