不動産Q&Aシリーズ 賃貸相談Vo.4_「賃貸借契約と連帯保証人の責任について」

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~賃貸借契約と連帯保証人の責任について~

 

 

【改正民法施行(令和2年4月)後の連帯保証人に対する請求】

 

 

<質問>

 

当社は、平成30年5月にY社と建物の賃貸借契約を結びました。

 

Y社の社長の友人であるZさんが連帯保証人となっていました。

 

令和2年5月にY社との賃貸借契約を更新しましたが、

Zさんとの連帯保証契約の更新は行いませんでした。

 

令和2年8月からY社が家賃を支払わなくなり、

8月から10月までの3か月分の家賃が未払いとなりました。

 

このため、Y社との賃貸借契約を解除し、

未払賃料をY社と連帯保証人のZさんに請求しました。

 

しかし、Y社は経営不振で支払いができず、

Zさんからは次のように言われました。

 

「連帯保証契約を更新した覚えがないので、令和2年5月以降は連帯保証人の責任はない。

 

また、令和2年4月から改正民法が施行されており、

極度額を書面で定めていない連帯保証契約は無効なので、私には支払いの義務はない」とのことでした。

 

Zさんに連帯保証人としての責任を追及できないのでしょうか?

 

 

<回答>

 

賃貸借契約を更新する際、賃借人とは更新契約を結びますが、

連帯保証人には更新契約を求めないことがよくあります。

 

そのため、賃借人が家賃を払わない場合に連帯保証人が支払いを拒否することがあります。

 

しかし、裁判の判例では、連帯保証契約の更新手続きを行っていなくても、

連帯保証人は賃借人の債務について責任を免れないとされています。

 

さらに、本件では改正民法が施行された後に連帯保証契約の更新が行われていないため、

改正民法は本件の連帯保証契約には適用されません。

 

したがって、極度額の定めがなくても連帯保証契約は有効ですので、

貴社はZさんに対してY社の3か月分の未払賃料を請求することができます。

 

 

【賃貸借契約の更新後の連帯保証人の債務の存続していくのか】

 

建物の賃貸借契約を結ぶとき、賃借人と連帯保証人が署名と押印をすれば、

その期間中、連帯保証人は賃借人の債務に責任を持つことになります。

 

そして、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と連帯保証人が共に更新契約書に署名と押印をすれば、

更新後の期間中も連帯保証人は責任を負います。

 

しかし、実際には、賃貸人と賃借人だけが更新契約を結び、

連帯保証人が関与しないケースも少なくありません。

 

この場合、連帯保証人が更新後の賃借人の債務に責任を持たないのではないか、という問題が生じます。

 

この点について、最高裁判所は次のように判断しています。

 

もし特別な事情がない限り、

連帯保証人は更新後の賃貸借契約による賃借人の債務についても責任を負うことになります。

 

つまり、最初に結んだ保証契約の責任は、更新後の契約にも引き継がれるということです。

 

したがって、最初の賃貸借契約の連帯保証人は、

更新契約を結んでいなくても、

更新後の賃借人の債務について連帯保証の責任を免れないことになります。

 

これを念頭に置いて、連帯保証人が賃貸借契約の更新時にどうなるかについて不安がある場合は、

事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

 

 

【改正民法施行後は、極度額の定めがなければ連帯保証人に請求ができなくなるのか】

 

Zさんは、改正民法施行(令和2年4月)前の未払い賃料について、

連帯保証契約には極度額の定めがないので無効だと主張しています。

 

改正民法は、施行後に新たに締結される契約に適用されます。

 

本件連帯保証契約は改正民法施行前(平成30年5月に)締結されたものであり、

改正民法施行後に直ちに適用されるわけではありません。

 

改正民法が適用されるのは、施行後に新たに連帯保証契約を締結した場合や、更新した場合です。

 

ただし、本件連帯保証契約は改正前の民法の時代に締結され、

改正民法施行後に賃貸借契約が更新されましたが、

連帯保証契約の更新手続きは行われていません。

 

そのため、改正民法の適用はありません(附則21条1項)。

 

要するに、Zさんの連帯保証契約には改正民法の規定は適用されないため、

契約は有効であり、連帯保証人としての責任を負うことになります。

 

 

【ポイント】

 

  • 賃貸借の保証債務は、賃貸借が更新された場合には、
    保証契約を更新していなくとも、特段の事情のない限り、更新後の賃借人の債務について保証責任を負う。
  • 民法改正前に締結された連帯保証契約は、改正民法施行後に当然に改正民法の適用を受けるわけではなく、
    極度額規制の適用はない。

 

 

月刊不動産2024年7月号より抜粋・編集したものです。

 

 

 

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐