ハザードマップ解説Ver.1 「自然災害の種類とハザードマップの留意点」23年新年号

ハザードマップ解説 Ver.1

 

自然災害の種類と「ハザードマップ」の留意点

 

全日本不動産協会会員の不動産業者に向けた専門誌の記事を一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

 【序章】

 

ハザードマップとは、

自然災害に対する備えや被害を軽減するために作成された地図で、

災害の想定や避難場所などが記されています。

 

災害が発生した際、建物が被害を受けることで、

居住者の命や財産にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

 

最近では、台風や梅雨の長雨、

さらに「ゲリラ豪雨」などによる水害が日本各地で頻発しています。

 

そのため、国土交通省は2020年8月から、

不動産取引の際に「水害ハザードマップ」を説明することを義務化しました。

 

この連載では、初回として、

ハザードマップの種類や重要事項説明との関連性、

さらに東京都内でのハザードマップの公開状況について詳しく解説します。

 

第2回以降では、東京都内の区市町村ごとに

具体的なマップの事例や各エリアの特徴についても紹介していきます。

 

 

 【ハザードマップの種類】

 

 

1水害

 

水害は、大きく分けて洪水、雨水出水(内水氾濫)、

そして高潮の3種類に分類されます。

 

不動産取引時の重要事項説明では、

「水防法に基づいて作成された水害ハザードマップ」を提示し、

対象物件のおおよその位置を示すことが求められます。

 

具体的には、該当するハザードマップの有無や名称、

そして物件の位置を示すことが必要です。

 

東京都内での指定状況は以下の通りです。

 

 

1-1. 洪水

 

 

洪水は、河川の増水により堤防が決壊したり、

水が堤防を越えたりして発生する水害です。

 

東京都では、荒川、江戸川、中川、神田川、石神井川などの河川において

「洪水浸水想定区域」が指定されています。

 

これらの河川では、

水防法に基づく最大規模の降雨を想定した

洪水ハザードマップが重要事項説明の対象となります。

 

各区市町村のウェブサイトで、

該当するハザードマップが公開されていることが多く、

国土交通省関東地方整備局や東京都建設局のウェブサイトも参考になります。

 

水では、浸水の深さが5m以上に達する地域もあり、

場所によっては大きな被害が想定されるため注意が必要です。

 

 

1-2. 雨水出水

 

 

雨水出水は、豪雨などで排水能力を超えた雨水が溢れ、

浸水を引き起こす水害です。

 

東京都内では「雨水出水浸水想定区域」として指定された区域はないため、

水防法に基づくハザードマップは作成されておらず、

重要事項説明の対象外となっています。

 

しかし、一部の市区町村では、

独自に雨水出水ハザードマップが公開されているケースがあります。

 

川から離れた場所でも浸水が想定される地域が多いため、

重要事項説明時には水害リスクがないと誤解されないよう、

必要があれば雨水出水ハザードマップの説明を行うことが推奨されます。

 

 

1-3. 高潮

 

 

高潮は、台風など強い低気圧が接近した際、

海面が上昇して陸地に押し寄せる現象です。

 

東京都では、沿岸や河川沿いの17区に

「高潮浸水想定区域」が指定されており、

これが重要事項説明の対象となります。

 

 

東京都港湾局のウェブサイトで「高潮浸水想定区域図」が公開されており、

説明時に参考にすることができます。

 

この際、東京湾岸の区だけでなく、

海に面していない新宿区や目黒区でも

一部の川沿いに高潮浸水想定区域がある点に注意が必要です。

 

 

2土砂災害

 

 

地形に高低差がある場所では、

豪雨などにより土砂災害が発生することがあります。

 

土砂災害には、崖崩れ、土石流、地滑りの3種類があり、

重要事項説明では「土砂災害防止法」に基づき

指定された土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)や

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の説明が必要です。

 

指定区域は、高低差が少ない地域ではほとんど存在しませんが、

丘陵地にある地域では多くの指定があります。

 

東京都建設局のウェブサイトで、

各地域ごとの指定状況や具体的な位置を確認することができます。

 

 

3津波

 

 

海底で大きな地震が発生すると、

沿岸部や大きな川沿いで津波が発生する可能性があります。

 

重要事項説明では、「津波防災地域づくりに関する法律」に基づく

「津波災害警戒区域」について説明が求められますが、

東京都では現在、この区域は指定されていません。

 

ただし、東京湾沿岸部では、

津波が押し寄せた際の浸水が想定されている地域があり、

「津波ハザードマップ」が公開されています。

 

必要に応じて、このマップを説明に利用することが望ましいでしょう。

 

 

4地震・液状化

 

 

地震や液状化に関するハザードマップは

現時点では重要事項説明の義務はありません。

 

しかし、市区町村によっては、

地震の揺れやすさや危険度を示した地震ハザードマップが公開されています。

 

液状化に関しては、東京都建設局が提供している

「東京の液状化予測図」が参考になります。

 

 

5火山

 

 

東京都内には伊豆大島や八丈島など、

火山を抱える島々がありますが、

火山ハザードマップに関する説明は現在、

義務付けられていません。

 

該当する地域では、火山ハザードマップや防災マップが役立つでしょう。

 

以上のように、ハザードマップは災害リスクを事前に理解し、

適切な備えをするための重要なツールです。

 

不動産取引や居住地域の安全性を確認する際に、

これらのマップを活用することが大切です。

 

 

不動産東京2023年新年号より抜粋・編集したものです。

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐