ハザードマップ解説Ver.3 「地震災害リスクの傾向(その1)」23年秋号

ハザードマップ解説 Ver.3

 

 

地震災害リスクの傾向(その1)

 

 

全日本不動産協会会員の不動産業者に向けた専門誌の記事を

一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

 

 【序章】

 

今年も梅雨の季節に入ると、

東北地方では豪雨による被害が発生し、

夏には関東地方各地で床下・床上浸水が相次ぎました。

 

また、これから秋にかけて、台風の襲来が予想されており、

さらなる被害が懸念されています。

 

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震は、

台風21号が通過し、北海道に大量の雨をもたらした直後に発生しました。

 

その結果、土砂災害が激化し、多くの被害をもたらしました。

 

このように、台風や豪雨、そして地震が連鎖的に発生することによって、

被害が増大するリスクが高まります。

 

地球温暖化が進行する中で、

台風の勢力がさらに強まる可能性が指摘されており、

台風や豪雨、そして地震の「ダブル災害」が発生する可能性も無視できません。

 

こうした複合災害のリスクを考慮すると、

地域の災害リスク情報を正確に把握することが、これまで以上に重要となってきます。

 

第1回の記事では、災害ごとのハザードマップを簡単に紹介しましたが、

今後の記事では、東京都内の災害リスクに焦点を当てて、

ハザードマップの実態やそれに基づくリスク傾向について詳しく解説していきます。

 

 

 

【東京都被害想定デジタルマップ】

 

 

東京都は2023年3月24日に

「東京都被害想定デジタルマップ」を公開しました。

 

このデジタルマップは、

2022年に10年ぶりに見直された最新の地震被害想定を反映したもので、

東京都内の地震リスクを把握する際の重要な参考資料となります。

 

ハザードマップとして、

多様な地震リスクを簡単に視覚的に確認できるのが特徴です。

 

 

地震リスクの多様な項目

 

このマップでは、以下のような地震リスクに関する情報を確認することができます。

 

  • 震度分布:どの地域でどの程度の震度が予想されるかを表示
  • 液状化危険度:液状化が起こる可能性が高い地域をPL値で表示
  • 液状化沈下量:液状化による地盤沈下の予想量を表示
  • 急傾斜地崩壊危険度ランク:急斜面の崩壊リスクを表示
  • 建物全壊棟数:地震で全壊する建物の数を予測
  • 焼失棟数:地震による火災で焼失する建物の数を予測。
  • 細街路閉塞率:狭い路地がどの程度塞がれるかを表示。
  • 特定緊急輸送路沿いの全壊棟数:高速道路や主要道路沿いの全壊する建物数を予測。

 

これらの項目は、「首都直下地震」など、

東京都に大きな影響を与える可能性が高い

複数の地震シナリオに基づいて予測されています。

 

シナリオには、都心南部直下地震や多摩東部直下地震、

大正関東地震、立川断層帯地震、さらには南海トラフ巨大地震が含まれています。

 

 

リスクを把握するための色分け

 

デジタルマップは色分けによって、

各項目のリスクを視覚的にわかりやすく示しています。

 

赤系の色が濃いほどリスクが高いことを示しており、

これにより地域ごとの地震リスクを一目で把握することができます。

 

 

震度分布のポイント

 

まず、震度分布に注目しましょう。

 

各地震シナリオにおいて、

どの程度の震度が予想されるかを確認できます。

 

例えば、都心南部直下地震のシナリオでは、

震度7が予想される地域が、

軟弱な地盤を持つ江戸川区や江東区、

荒川区、足立区、大田区の一部に点在しています。

 

震度6強の地域は、大田区や品川区、世田谷区、目黒区、港区など、

主に低地帯に広がっています。

 

一方、震度6弱の地域は、武蔵野台地に広がり、

西へ向かうほど地盤が安定していることがわかります。

 

立川断層帯地震のシナリオでは、

立川断層に近い日野市、立川市、昭島市、

武蔵村山市の一部で震度7が予想されています。

 

震源からの距離が遠くなるにつれて震度は小さくなるものの、

地盤の状態によっては揺れが増幅されることがあります。

 

 

液状化危険度と沈下量

 

次に、液状化のリスクに関して見ていきます。

 

液状化危険度は、PL値(液状化可能性指数)を用いて示されます。

 

PL値が15以上であれば極めて高い危険度を示し、

5から15の間であれば高い危険性があるとされます。

都心南部直下地震のシナリオでは、

PL値15以上の地域が大田区、江東区、江戸川区、

葛飾区などの埋立地や低地に分布しています。

 

また、PL値5から15の地域は、東京低地一帯に広がり、

内陸部でも川沿いの低地に点在していることが確認できます。

 

液状化による地盤沈下の量も重要な情報です。

 

地盤沈下が大きい地域では、建物への影響が大きくなる可能性があります。

 

特に、液状化の危険度が高い地域では、建物の地盤改良や耐震対策が求められるでしょう。

 

 

急傾斜地崩壊危険度

 

最後に、急傾斜地崩壊危険度ランクについてです。

 

これは、土砂災害警戒区域内のがけ崩れによる

建物被害の危険度を示しています。

 

ランクはAからCの3段階に分かれており、

特に危険度が高いランクAの区域は、

多摩丘陵地域に集中しています。

 

町田市、八王子市、多摩市、稲城市などで目立ち、

都区部でも渋谷区や港区、千代田区に点在しています。

 

 

まとめ

 

東京都被害想定デジタルマップは、

地震リスクを把握し、備えるための強力なツールです。

 

各地域のリスクをしっかりと理解し、

適切な対策を講じることが求められます。

 

ぜひ、このマップを活用して、地震に対する備えを万全にしましょう。 

 

不動産東京2023年秋号より抜粋・編集したものです。

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐