宅地建物取引業法はどのような理由で作られたのか?2. 度重なる業法改正(1)

 

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性悪説に基づいた業者に対する規制として宅建業法が生まれました

 

宅建業法は、昭和27年[1952年]6月に制定されて以来、約70年が経過し、


その間、他の法令に見られなぃほど多数回法改正を重ね、

宅地建物取引業制度の整備・充実が図られてきました。

 

制定後の改正経過は、大きく4つの期に分けられます。

 

第1期は、不動産業に対する規制がなく野放し、

無法状態にあった時期でした。

 

悪質な業者を排除、取り締まるという警察行政の一環として

宅建業法が制定されました。

 

第2期は、 昭和30年代半ばから

昭和40年代半ばの高度経済成長を反映して

宅地建物の需給が飛躍的に増大しました。

 

仲介業だけではなく

宅地造成・分讓マンション等の開発・販売業が発展し、

宅地建物取引業が大規模化、多様化した時期でした。

 

マイ・ホ-ムの購入者等は、

取引の知識や経験も乏しく、

紛争に巻き込まれて不測の損害を被る事案が増えました。

 

そういた状況が続き

昭和39年の改正では宅地建物取引の公正の確保がうたわれました。


昭和46年の改正では

購入者等の利益保護と宅地建物の流通の円滑化が法制化され

宅建業法の全文を見直し大幅に改正、

整備されるに至りました。

 

第3期は、昭和50年前後から社会構造が変化しました。

 

我が国においても

中古住宅等の流通量の拡大と買い換えの需要という状況が現われ、

大手企業、信託銀行等が

不動産仲介業に積極的に参入し始めた時期でもあります。

 

当時の不動産流通(仲介)業界は、

いまだ中小、

個人営業的な宅建業者が多くを占めていました。

 

仲介契約書等の書面を取り交わさないままに

仲介業務に入り、

仲介報酬を巡る紛争が起きる等

旧態依然の方法で業務を進めていたため、

不動産流通業界を近代化し

不動産業を育成していく必要がありました。

 

そこで、昭和55年5月の改正で媒介契約の規制を導入し、

不動産流通業の近代化と不動産取引市場の透明化、

活性化が図られました。

 

第4期は、消費者行政の一元化を日指して

平成21年6月5日に消費者庁設置関連三法が公布されました。

 

宅建業法が国土交通省と

消費者庁の共同所管となり、

消費者保護の要請が一段と

強化されることになりました。

 

(1) 第1次改正(昭和29年6月12日法律第178号、議員提案)

宅建業法施行後、

はじめて宅建業者の登録更新の時期を迎えるに当たって、

登録手数料のうち更新登録手数料の引下げと、

宅地建物取引業に関する苦情・紛争処理等に当たらせるため

都道府県に宅地建物取引業審議会を

設置することができるように改正しました。

 

(2) 第2次改正 (昭和32年5月27日法律第131号、議員提案)

宅建業者の登録要件として

試験制度や資産条件の要否が問題となりましたが、

時期尚早として立法化に至りませんでした。

 

しかし、いわゆるモグリ業者、

宅建業者の不正等により

取引関係者が不測の損害を被る紛争が

相当件数に達していて、

宅建業者の資質を向上させて社会的信頼を高め、

業務の運営を一層適正化するため、

以下の業務規則が確立されました。

 

「改正内容」

①宅地建物取引主任者制度の新設(宅地建物取引員試験の実施、専任の取引主任者の設置義務)、

②営業保証金制度の設置、

③宅地建物取引員会、 同連合会の設立に関する各規定の設置

④無登録事業等の禁止規定の強化

 

〔改正の背景〕

破産者・来成年者等を除いて、一定の登録手数料を納めれば誰でも登録して

営業できることになっていました。

 

業務を行う上で必ず知っておかなければならない

必要最小限度の知識すら有しない者も相当見られ、

登録業者を装つたもぐり業者の数も少なくありませんでした。

 

そのため依頼者が不測の損害や事故を被る例が

相当の件数に逹していました。

 

そこで、宅建業者の質を向上し、

業者に対する一般社会の信頼度を高め、

業務の運営を一層適正化するため、

専任の取引主任者制度、

営業保証金制度等の措置を講ずることになりました。

 

*昭和31年3月末の宅建業者数は2万1023 (個人業者89.7%)

宅地建物取引員試験の合格者は、

昭和33年度3万1330名、

昭和34年度1万3034名、

昭和35年度1万2473名、

昭和36年度1万1687名

(建設白書昭和36年度版)。

 

 

参考文献:国立国会図書館三訂版「逐条解説」宅地建物取引業法より

 

 

 

筆者:大脇和彦プロフィール

愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐