不動産Q&Aシリーズ  賃貸相談Vo.2

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エレベーターの故障に関する賃貸人の債務

 

<QUESTION>

 

私たちは賃貸ビルを運営していますが、

エレベーターが古く、

一部の部品が劣化しているため、

しばしば動作しなくなります。

 

その状態から半年後、

2階のテナントから、

常にエレベーターを使えるよう修理しない限り、

賃料を支払えないとの通知がありました。

 

エレベーターを常に動作可能にするためには、

数百万円のリニューアル費用が必要ですが、

ビルのオーナーは、

エレベーターがしばしば動作しない場合でも、

リニューアルする義務があるのでしょうか?

 

<ANSWER>

 

一般に、建物の賃貸人は、

エレベーターその他の建物の設備等について、

保守管理・点検・修繕をする義務を負っています。

 

一方で、エレベーターなどの設備が古い型式であり、

かつ賃借人もそのことを認識している場合、

裁判例では、賃貸人が古い型式の設備であることを前提にして

適切に保守・点検・修繕を行っていれば、

法的な義務を履行したものとみなされるという判例があります。

 

これについて法的な観点から詳しく見ていきましょう。

 

 

【建物の設備に関する賃貸人の責任】

 

建物を貸す場合、

賃貸人は賃借人に建物を使ってもらう責任があります。

 

そのため、賃貸人は建物やその設備を保守し、

点検し、修繕する義務があります。

 

 

【古い設備に対する賃貸人の責任の内容】

 

では、エレベーターなどの設備がかなり古く、

特に部品が古びていて、

修理では限界がある場合、

費用をかけて新しいものに交換すれば

エレベーターが常に動くようになるとしたら、

賃貸人はその費用を出す義務があるのでしょうか?

 

 

【設備に関する賃貸人の責任に関する裁判事例】

 

最近の裁判で、

建物のエレベーターなどの設備についての

賃貸人の責任についての判断がありました

(東京地裁判決、2021年6月22日、ウエストロー・ジャパン事件)。

 

この事件では、オーナーであるXが持つ

4階建てのビルの2階をレストランとして借りたYさんが登場します。

 

ビルには、レストランの個室に直結したエレベーターがありましたが、

古い型式で部品が経年劣化し、

頻繁に動かない状態になっていました。

 

Yさんは、2020年5月までは家賃を支払っていましたが、

エレベーターが使えないため、賃料の支払いを停止しました。

 

裁判所は、このエレベーターが古い型式であることは、

契約が締結される前に

Yさんも理解していた可能性があると判断しました。

 

したがって、Xは、古い型式であることを前提として、

保守、点検、修繕を適切に行っていれば、

賃貸人としての責務を果たしたと考えられます。

 

そのため、700万円以上かかる

リニューアル工事を行う義務まで

Xに負わせることはできないと判断しました。

 

つまり、エレベーターを使えないことが

賃料割引の理由になる場合でも、

レストランが2階にあり、

階段を使って出入りができることを考慮すると、

賃料割引は最大でも月額5万円程度と見積もられます。

 

以上から、Yさんが賃料を3ヶ月以上滞納する場合、

賃貸人との信頼関係が崩壊し、

賃貸契約の解除が認められる可能性が高いと考えられます。

 

 

 

【賃貸人の責任に関する重要ポイント】

 

1.賃貸人は建物を賃借人に使用させる責任があるため、

建物や付属設備について保守・点検・修繕の義務があります。

 

2.設備が古い形式の場合、

賃借人もそのことを理解している場合には、

賃貸人は古い形式であることを前提にした保守・点検・修繕を行えば、

責任を果たしたと見なされます。

 

3.賃借人が設備の問題を理由に賃料を滞納する場合、

賃料の3ヶ月分を超える滞納がある場合、

賃貸人は通告の上で契約を解除することができる可能性が高いです。

 

 

★これらのポイントを押さえて、賃貸契約における責任と権利を理解しましょう。

 

 

――― 月刊不動産2024年1月号より抜粋・編集したものです。

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐