不動産仲介業務の現状と課題 5.仲介と情報提供 (その1)

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1 仲介と情報提供

宅地建物の売り情報、買い情報を提供するだけの行為は、

情報提供行為であり、

当事者の間に立って契約の成立に向けての交渉をあっせんするものでない限り、

仲介には該当しませんから、宅建業法2条2号にいう媒介には当たりません。

 

売買物件や賃貸物件があるとか、

売り手・買い手がいることを知らせる物件情報(不動産情報)の提供は、

単なる情報提供行為にとどまる限り、

指示仲立(紹介仲立、Nachweismäkler、ドイツ民法652条)と呼ばれます。

 

これに対し、仲介は、

仲介業者が物件情報、

つまり取引物件の存在(売り情報)、

物件を探している買い手の存在(買い情報)を入手し、

顧客にこれらを提供するにとどまらず、

仲介業者が売買等の契約の成立に向けて

両当事者の間に立って条件交渉等をあっせん尽力することが

仲介の本質的な要素であります。

 

したがって仲介と指示仲立とは区別する必要があります。

 

物件情報の提供とか「紹介」と称しながら、

取引物件の存在や売却希望者、

買受け希望者の存在について情報を提供するだけでなく、

自らも現地案内し取引の相手方との条件交渉、

契約の立会等に関与することは、

当事者の間に立って売買契約の成立に向けてあっせん尽力する行為として、

宅建業法2条2号にいう「媒介をする行為」となります。

 

その結果、宅地建物取引業の免許を受けない者が

前記のように取引に関与すれば、

無免許営業として宅建業法12条違反となり、

紹介を受けた宅建業者は無免許営業の幇助行為に当たります。

 

また、宅地建物取引業の免許を受けている宅建業者Aが、

他の宅建業者(売主業者、販売代理業者)Bが

販売する分譲物件(宅地建物分譲、マンション分譲等)に顧客を紹介し、

成約ごとに紹介手数料(名目如何を問わず対価性を有する金員)を受領する場合、

Aが顧客にBの販売物件の存在、

分譲業者の名称等に関する情報を提供する程度であれば情報提供行為にとどまりますが、

Aが顧客をBの販売物件や販売事務所へ案内し、

他の販売物件と比べてAが紹介する物件の良さ、

立地等を説明して当該販売物件を推奨したり、

取引に不慣れな顧客に口添えしたり助言、指導する行為は、

その具体的な内容によっては情報提供行為の域を越え、

「媒介をする行為」に該当することとなります。

 

この場合、Aは、

宅地建物取引業の免許を受けているため無免許営業違反は当らないものの、

「媒介をする行為」に当たるため、

顧客に対し媒介契約書の交付(法34条の4)、重要事項説明書の交付、

説明(35条1項)が義務づけられます。

 

 

2 仲介と立会

ア 契約(取引)の立会とは、

特定の当事者間で一定の事項について合意がなされた旨の事実を見届けることをいい、

不動産取引において、この目的で売買契約時や代金決済時に立ち会う者を立会人という。

 

さらに、後日、当事者間で売買契約が

締結された事実や代金の支払いや所有権移転が履行された事実を確認し、

これを証するために立会人をつけることがあります。

 

しかし、立会人は、

売主に売却権限があるかどうかや取引物件の権利関係、

法令上の制限等を調査、

説明すべき義務を負うものではありません(後掲東京地判昭60.9.25)。

 

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【東京地判昭60.9.25判夕599号43頁】

〔事案〕

株式会社A (代表取締役 Y1 ) は、売主Bの自称代理人Cから本件不動産を買受け、買主Xは仲介業者Y2の仲介によりAからこれを買受ける契約を締結した。その際、Xは弁護士Y 3 に取引立会を依頼し報酬 (10万円)を支払った。Cが売主本人に無断でAと売買契約を締結したことが判明し、Xは所有権移転登記を抹消せざるを得なかった。Xは、Y3 に対し売主の売却意思の調査義務違反を理由に売買代金相当額等の損害賠償を請求した。裁判所はXの請求を棄却した。Y1、Y2 に対する損害賠償請求は本書390頁,取締役の第三者に対する責任は本書798頁。

( 事案要約 )

株式会社A(代表取締役Y1)は、

売主Bの自称代理人Cから不動産を購入し、

その後、仲介業者Y2を通じて買主Xと売買契約を締結しました。

 

しかし、後にCが売主の許可なく売買契約を結んでいたことが判明し、

Xは所有権移転登記を抹消する事態に直面しました。

 

Xは、弁護士Y3に対して売主の売却意思の調査義務違反を主張して、

売買代金相当額の損害賠償を求めましたが、裁判所はXの請求を棄却しました。

 

〔判旨〕

 一般に、 契約締結の立会人とは、後日契約締結の事実を証するための証拠とする目的で契約締結の場に立ち会わせる者をいい、右立会人が弁護士であっても、法律専門家である弁護士であるということに伴って、付随的に契約内容につき法律上の観点から適切な指導助言することが期待されることがあるとしても、立会人としての本質に変わりはなく、契約当事者の代理人あるいは仲介人とは異なり、契約の相手方当事者と自ら交渉したり、契約の目的である権利関係の帰属、内容あるいは契約当事者の権限の有無等を自ら調査したりする義務はないものというべきである。

本件についてみると、前記認定のとおり、Y3 は、本件売買契約の締結のみではなく本件先行売買契約の締結にも立ち会うことを依頼され、本件先行売買契約においてCがBの代理人として行動していることを知っていたのであるが、Aの代表者であるY1 に対してBに会って本件不動産売却の意思の有無及びCに対する代理権授与の有無を確認するよう指示し、本件先行売買契約締結の際にはCがその代理権を証するものとして提示した本件委任状につきその作成が本人の意思に基づくものであるかどうか説明を求め、また、本件売買契約締結の際にはXの代表者である甲らに対して自分は直接Bに会っていない旨をわざわざ述べ、更に、その後の司法書士事務所における右各売買契約の売買代金授受の際にもCに対して本件売買契約において契約条件の一つとされてD夫妻と即決和解がいまだ成立しないうちに売買代金全額を支払ってしまってよいのかと注意しているのであるから、V3は、本件売買契約につき立会人として期待される指導、助言を一応尽しているものと認めるのが相当である。 Xは、Cの代理行為の態様がいわゆる署名代行の方法によるものであること、Y3はCの代理権限を証する本件委任状が本人であるBの書いたものではないことを認識していたこと及び本件委任状の文言に不備があることをもって、Y3はBにCの代理権の有無を確認すべきであったと主張するが、立会人にすぎないY3は、前示したとおり、右のような義務を負うものではないものというべきである。

 

(略) また、右即決和解を成立させることが本件先行売買契約及び本件売買契約において契約条件の一つとされていたこと、Y3がAから右即決和解の申請手続を依頼されていたこと並びにY3が本件売買契約締結の際Xの代表者である甲に対しAから右即決和解の申請手続をとることを依頼されていると述べたことは、前示のとおりであるが、これらの事実が存在することを考慮しても、Y3 は、Xに対する関係では立会人にすぎないのであるから、Xに対し、事前にD夫妻との間に右即決和解応諾の意思の有無を確認すべき注意義務を負う理由はないものというべきである。したがって、Y3には本件売買契約締結の立会人として尽すべき注意義務に格別の懈怠があるものということはできないから、XのY 3 に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

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( 判旨解説 )

この裁判事案は、

不動産の売買契約における立会人の責任について争われています。

 

売主Bの自称代理人Cが無断で不動産の売買契約を締結し、

その後、売主本人の承認が得られなかったために

契約が無効となりました。

 

その後、仲介業者Y2の仲介で、

売主Aから買主Xに不動産が再び売却されました。

 

この際、買主Xは弁護士Y3に立会いを依頼し、

その報酬を支払いました。

 

裁判所は、立会人とは、契約締結の事実を証するために立ち会う者であり、

法律専門家である弁護士であっても、

契約内容について指導助言する義務を負わないと判断しました。

 

弁護士Y3は、立会人として期待される指導助言を

一応尽していたと認定されました。

 

Xは、代理人Cの行為についてY3が

十分な調査をしなかったと主張しましたが、

立会人であるY3にはそのような義務はないとされました。

 

また、即決和解についても、

Y3にはXに対して特別な注意義務はないとされました。

 

その結果、XのY3に対する請求は認められず、Xの主張は退けられました。

 

(※簡略解説)

一般的に、契約締結の立会人は、

契約の事実を証拠とするために立ち会う者であり、

弁護士であっても本質的には立会人であり、

契約内容について法律上の観点から

適切な指導や助言をする義務はないと判決されました。

 

この事案では、弁護士Y3は

売買契約の立会人として期待される指導や助言を一応行っていたと認定されました。

 

Xは、代理人Cの行為が署名代行の方法によるものであることや、

委任状に不備があることを主張しましたが、

立会人であるY3にはそのような義務はないと判決されました。

 

さらに、即決和解の成立についても、

Y3には特別な注意義務はなく、

XのY3に対する請求は理由がないと判断されました。

 

したがって、Xの請求は棄却されることとなりました。

 

 

 

 

参考文献:国立国会図書館 「不動産取引における仲介」より

 

 

 

 

筆者:大脇和彦プロフィール

愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐