不動産媒介契約とは何か (その1)

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不動産媒介契約とは何か (その1) 

※ここではあえて“仲介”ではなく同意語の“媒介”という言葉を用いていきます。 

何故なら“媒介”という文字しか用いられてない宅地建物取引業法を中心として深堀するためです。 

 

 

1.媒介と仲立 

 

媒介とは、他人の間に立って、

当事者の法律行為の成立を支援する行為であり、

不動産の売買や賃貸などの契約を指します。

 

この用語は宅建業法だけでなく、商法や旅行業法、

保険業法などでも使用されていますが、明確な定義は規定されていません。 

 

現代の取引社会では、媒介は役務提供契約の一形態として重要な役割を果たしています。

 

しかし、民法には媒介契約の規定が存在しないため、

法制審議会民法部会でも媒介契約を特殊な委任として設ける提案がされましたが、

見送られています。 

 

 

【媒介に関する法制審議会民法(債権関係)部会での議論】―――――――――――――― 

 

準委任の概念は、第三者との間で法律行為でない事務を行うことを目的とするものに限定し、

これまで民法典には存在しなかった媒介契約を特殊の委任として規定する提案が行われました。 

 

この提案では、仲立(なかだち)契約を含む媒介契約一般について、

「当事者の一方が他方に対し、委託者と第三者との法律行為が

成立するように尽力することを委託する有償の準委任である」と定義し、

媒介契約における共通の媒介者の義務として、

委託の目的に適合する法律行為の相手方や内容についての情報収集・調査を行い、

これを委託者に提供することを挙げています。

 

さらに、報酬支払方式についても規定が提案されました

(民法(債権関係)部会資料17-2、第3委任、7特殊の委任(媒介契約に関する規定)。 

 

一方、媒介に関しては、商法27条以下、

会社法16条以下に媒介代理商の規定が存在し、

商法543条以下には営業仲立(商事仲立)についての規定があるものの、

媒介の一般的な定義や効果についての明確な規定はないことが指摘されています。 

 

しかしながら、他人間の商行為の媒介を業とする商事仲立の規定は

民事仲立には適用されません。

 

一方で、非商人問の不動産仲介などが世に多く行われていることから、

委任(準委任)の特例として媒介契約の規定を民法に設けることが提案されました。

 

この提案は、私法的な側面を分析し、

具体的な規律を導き出す上で有益な概念を提供するために行われたものです。 

 

部会では、媒介契約に関して民法に規定を設けることの是非について、

明確に条文で規定することが望ましいとの意見があります。

 

また、商事仲立とそれ以外の仲立(民事仲立)との区別に合理性はなく、

民法に一般的に規定することが望ましいという意見もあります。

 

また、法律行為の成立に関連する委任や準委任などのリストがこれまで明確ではありませんでした。

 

ですがこれを代理、媒介、取次の三つの形態があることを

民法で示すことはわかりやすいという観点から意味があるとされていますが、

媒介契約の定義が難しく、十分に検討すべきであるとの意見も提出されました。 

 

また、媒介者の情報提供義務については、

商社では一般的に取引当事者間に情報格差があることが前提とされており、

商社のビジネスの基盤となっているため、

情報提供義務を一般的に認めることは

実際のビジネスにおいて不都合が大きいとする反対の意見もありました。

 

そのため、特殊の委任として媒介契約を新たに設ける提案は見送られることとなりました。 

 

現代社会において生じている様々な役務提供型の契約の中で、

性質が決定しにくいものが準委任とされている現状は、

望ましいものとは言えません。

 

物の引渡しを伴う役務や、

物が手段・施設・材料として使用される役務、

純粋な役務など、役務提供契約のさまざまなタイプに基づいてみると、

媒介契約は純粋な役務提供と位置づけられる契約の一つであり、

不動産媒介を含む日常生活に広く存在する契約です。 

 

特に、宅建業法は媒介の定義や要件、

効果について規定せずに、

宅建業者が宅地建物の売買や貸借などの媒介業に対して公法的な業務規制を行っています。

 

また、媒介業者に関する責任追及に関する紛争

(重要事項説明義務に関する情報提供義務や報告義務の違反など)や、

媒介業者の報酬請求権に関する紛争については、

相当数の判例や裁判例が蓄積されていますが、

これらは民法の契約類型として規律されていないことは、

立法上の観点から見ると特殊な状況といえます。

 

依頼者と媒介業者との契約関係を明確にするために、

媒介に関する規律を私法の一般法として設ける必要性は高く、

明確な文言で規定すべき契約類型であると言えます。 

 

******【議論の要約】****** 

法制審議会民法(債権関係)部会では、

媒介契約に関する新たな規定を作る提案が行われました。 

 

この提案では、民法典には存在しなかった媒介契約を特殊な委任として定義し、

当事者の一方が他方に対して第三者との法律行為が

成立するように努力する準委任として規定します。

 

また、報酬の支払い方法についても規定されます。

商法や会社法には媒介代理商の規定がありますが、

民事仲立の規定は適用されないため、媒介契約の規定が民法に必要とされました。 

 

しかし、媒介契約の定義や媒介者の情報提供義務については意見が分かれ、

新たな規定の提案は見送られました。

 

媒介契約は役務提供契約の一形態であり、

不動産媒介を含む一般的な契約とされています。

 

宅建業法では媒介業に公法的な業務規制があり、

媒介業者の責任追及や報酬請求に関する紛争には判例や裁判例が存在しますが、

民法においては契約の形式が明確に定められていないという特異な状況です。

 

媒介に関する規定が必要であり、契約の形態として明確に定められるべきとされました。 

 

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  • 商事仲立と民事仲立  

商事仲立人は、他人間の商行為の媒介を業とする者であり、

「商事仲立営業」として商法に規定されています(商法543条〜550条)。

 

一方、商行為の媒介を業とする者は「民事仲立人」とされています。

 

不動産媒介の対象は主に不動産売買や賃貸借ですが、

商行為に限らず、商行為以外の法律行為にも及ぶことから、

不動産媒介業者は民事仲立人と見なされています

(最高裁判例昭和44年6月26日民集23巻7号1264頁)。

 

不動産媒介業者は商法の定義により商人となり、

商法502条11号に定められた「仲立ちに関する行為」を営業とします。 

 

 

 

参考文献:国立国会図書館 「不動産媒介契約の要点解説」より

 

 

 

筆者:大脇和彦プロフィール

愛媛県松山市生まれ
マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立
不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も
趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク)
好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐