不動産媒介契約とは何か(その7)

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8 共同媒介 

 

(1) 共同媒介の形態 

 

共同媒介とは、一つの宅地建物取引について、

当事者の一方(売主、貸主)Aから媒介の依頼を受けた媒介業者

(元付け業者)Xと他方当事者(買主、借主)Bから

媒介の依頼を受けた媒介業者(客付け業者)Yとが共同して

成約に向けて媒介活動することをいいます。

 

当事者がそれぞれ別の媒介業者に依頼し、

媒介業者にとっては片手媒介であることに変わりはありません。

 

また、広大な面積を有する宅地や取引価格が高額であるとか

商業施設・開発物件といった規模の大きい事業用物件の売買では、

XとYとの間に、別の媒介業者M 1、M2が介在することがある。

 

中間業者とか“あんこ (業者)” と呼ばれます。

 

中間業者は、売主の媒介業者か買主の媒介業者のいずれかに属します。

 

例えば、M1がXから、M2がYから、

それぞれ報酬の配分を受けるとなれば、

売主側と買主側の媒介業者はM1とM2の間で

線引きされることとなります。

 

このような線引きを “わかれ”と呼びます。

 

なお、中間業者がX・Y双方の業者から

報酬の配分を受けるケースもあります。

 

 

 

(2)契約交渉と連携 

 

共同媒介では、当事者からそれぞれ依頼された媒介業者が、

一つの売買契約の成立という共通の目的に向けて尽力すると同時に、

自己の依頼者のために最善を尽くすという立場にあるため、

次のように媒介業務を進めます。

 

ⅰ)売主(貸主)の媒介業者と買主 (借主) の媒介業者とが

それぞれ依頼者に代わって“窓口”になって契約交渉を進めます。

 

取引慣行として、一方の媒介業者が他方の媒介業者の

“頭越し”に当事者と直接交渉したり、

連絡すべきでないとされています。

 

当事者が自己の信頼する媒介業者に媒介を依頼している以上、

お互いに媒介業者を契約交渉の相手として扱います。

 

ⅱ)中間業者が介在する場合も、

売主の媒介業者と買主の媒介業者との契約交渉は、

中間業者を介して伝達し、これに対する回答は、

その逆の順序で中間業者を介して伝達されます。

 

媒介業者が面談して交渉する場合、

中間業者を同席させるのが通例です。

 

最近は、メール等で媒介業者が連絡を取り合うことも多いですが、

連絡する順序は、上記のやり方であり、

直接、相手方の依頼者に連絡することは原則としてありません。

 

ⅲ)共同媒介では、依頼者のために

媒介活動をする媒介業者の立場を互いに尊重した上で、

成約に向けて複数の媒介業者間の連携と意思の疎通が求められます。

 

売主の媒介業者が買主の媒介業者に取引物件に関する

マイナス情報を伝えた場合、買主の媒介業者は、

依頼者である買主に対し、速やか、かつ正確に伝達、

報告しなければなりません。

 

(3)共同媒介と宅建業法 

宅建業法は、宅建業者を単位として行為規制し、

複数の宅建業者が一つの宅地建物取引に関与したときも、

それぞれの宅建業者の業務が規制対象となります。 

 

◆共同媒介と重要事項説明義務など 

宅建業法は、重要事項説明書の交付・説明 (35条1項)、

“37条書面”の交付を規定しており、

これらの規定は共同媒介に関わる宅建業者にも適用されます。

 

売主業者はもちろん、売主の媒介業者と買主の媒介業者も

宅建業者として、買主に重要事項説明書を

交付・説明する義務を負います。

 

媒介業者は、買主 (借主)からの媒介の依頼の有無にかかわらず、

重要事項説明義務を負います (千葉地判平23・2・17)。

 

たとえば、売主業者Aと買主Bとの売買契約において、

Aから依頼を受けた媒介業者XとBから依頼を受けた媒介業者Yが

共同媒介した場合、A、X、Yは、

それぞれBに対して重要事項説明書の交付・説明義務を負います。

 

この重要事項説明義務は、

宅建業者に課された固有の義務であります。

 

ただし、同じ内容の説明書を重ねて交付する方法は

現実的ではありません。

 

そこで、売主業者や媒介業者の一方が重要事項説明書を作成し、

これを作成した宅地建物取引士が交付・説明します。

 

重要事項説明書には、

売主業者、売主の媒介業者と買主の媒介業者が

それぞれ署名・押印し、各媒介業者の宅地建物取引士も

説明書に署名・押印することが求められます (35条5項)。

 

宅建業者と宅地建物取引士の署名・押印は、

重要事項説明書が適切に作成され、

買主に交付・説明されたことを証明する役割があります。

 

誤りがある場合、他の宅建業者は補足や訂正を行う責任を負います。

 

売主業者や媒介業者は、適切な補足や説明を行うため、

他の宅建業者から提供された情報だけでなく、

独自に調査点検する必要があります。

 

また、媒介業者が当事者双方に提供する

“37条書面” (売買契約書の代替)は、売主業者は買主に、

媒介業者は売主と買主の両方に交付する義務があります。

 

関与した宅建業者はこれに署名・押印し、

各宅地建物取引士も署名・押印しなければなりません

(37条1項、3項)。

 

 

参考文献:国立国会図書館 「不動産媒介契約の要点解説」より

 

 

 

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐