不動産Q&Aシリーズ  賃貸相談Vo.1

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賃借人の債務不履行と承諾した転借人への明渡請求

 

 

 

<QUESTION>

 

私たちが所有するビルの一室をA社に貸しました。

 

その後、A社から一部のスペースを

B社に転貸することに同意しました。

 

しかし、最近A社の経営が悪化し、

4か月間の賃料を支払っていません。

 

催告しても支払われなかったため、

A社との契約を解除しました。

 

しかし、転借先のB社は、

私たちに対して契約解除の催告をするべきだと主張し、

明渡しを拒否しています。

 

転借人の債務不履行で契約を解除した場合、

転借人に明渡しを求めることはできないのでしょうか。

 

 

 

<ANSWER>

 

一般的に、賃貸人の許可を得て行われた転貸借においても、

転貸借契約の元となる賃貸人と賃借人との間に

債務不履行があった場合、

賃貸人による適切な期間を設けた催告は、

契約の当事者である賃借人に対して行うだけで十分であり、

転貸を承諾した転借人に対する催告は

契約解除の要件ではないと考えられます。

 

したがって、賃貸人は、

賃借人に対して適切な期間を設定した催告を行い、

解除の意思を示せば、転借人に明渡しを要求する際に

転貸借は終了し、明渡しを求めることができます。

 

以下で最高裁の判例を用いて解説します。

 

 

【建物の転貸借の特徴】

 

賃貸借契約において、

賃借人が借りた建物を第三者に転貸するケースがあります。

 

この場合、賃借人は賃貸人との契約に基づいて転貸するため、

元となる賃貸借契約が賃借人の債務不履行によって終了すると、

それに基づいて成立していた転貸借も通常は終了します。

 

最高裁は、

「賃貸借契約が賃借人の債務不履行によって解除された場合、

賃貸人の承諾があった転貸借は、

原則として、賃貸人が転借人に目的物の返還を求めた際に、

転貸借人の債務不履行によって終了する」

との判断を示しています(最判平成9年2月25日)。

 

 

 

【承諾ある転貸への影響】

 

ただし、賃貸借が賃借人の債務不履行によって解除された場合、

転借人には大きな影響が出ます。

 

そのため、賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に

契約を解除しようとする場合、

賃貸人は賃借人だけでなく、

自ら承諾した転借人に対しても

相当期間を定めた催告を行う必要があります。

 

これにより、転借人にも賃借人の債務を代わりに

履行する機会が与えられます。

 

2020年4月1日に施行された改正民法の制定過程では、

この問題が検討されましたが、

結果として改正民法には盛り込まれませんでした。

 

 

【催告の要否】

 

したがって、賃貸人が承諾した転借人がいる場合、

賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に

契約を解除しようとする場合、

賃貸人は賃借人に対してのみ相当期間を定めた催告を行い、

催告期間内に賃借人から債務の履行がなければ、

賃貸借を解除し、

転借人に明渡しを求めることができると考えられます。

 

転借人が賃借人兼転貸人に転借料を支払っていた場合、

債務不履行がないにも関わらず

建物からの明渡しを余儀なくされる可能性があります。

 

最高裁の判断では、

「適法な転貸借関係が存在する場合に、

賃貸人が賃借人の賃料の不払いを理由に

契約を解除する場合において、特段の事情のない限り、

転借人に通知等をして賃料の代払いの機会を与える必要はない」

とされています(最判平成6年7月18日)。

 

 

 

 

 

【転貸借の終了と明渡し請求の時期】

 

転貸借は、賃貸借契約を基盤として賃借人が設定するものです。

 

そのため、賃貸借契約が

賃借人の債務不履行によって解除される場合は、

通常、転貸借も同時に終了します。

 

そして、賃貸借契約が解除されたとき、

転貸借の終了時期は賃貸人が

転借人に対して明渡しを請求した時期となります。

 

賃貸人が賃借人の債務不履行を理由として

賃貸借契約を解除する場合、

特に異なる事情がない限り、

転借人に通知して賃料の代払いの機会を与える必要はありません。

 

 

【Conclusion】

 

転貸借は賃貸借契約を基盤とするため、

賃借人の債務不履行によって

賃貸借契約が解除されると同時に転貸借も終了します。

 

賃貸人が転借人に明渡しを請求する際の転貸借の終了時期は、

その請求がなされた時点となります。

 

賃貸人は通常、賃借人の債務不履行による契約解除の際、

転借人に対して

特別な通知や代払いの機会を与える必要はありません。

 

月刊不動産2024年3月号より抜粋・編集したものです。

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐