不動産Q&Aシリーズ  法律相談Vo.1

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一般個人向けにわかりやすく要約し直して、ブログにしています。

 

購入した一棟賃貸アパートに暴力団が居住していた場合の売主の責任

 

<QUESTION>

 

一棟アパートを買ったら、

その中に暴力団のボスが住んでいることが分かりました。

 

この場合、売主に損害賠償を求めることはできるでしょうか?

 

 

<ANSWER>

 

売主に損害賠償を求めることができます。

 

暴力団のボスが住んでいたことで、

その部屋だけでなく、

他の部屋も含めてアパートを借りたり、

借りようとする人々が精神的に不安になり、

アパート全体の価値が下がるからです。

 

 

【売主の担保責任】

 

賃貸アパートを買ったら、

暴力団のボスが住んでいたという事実が発覚した場合、

売主に対して損害賠償を求めることができるかどうか、

という問題が生じます。

 

暴力団は常習的に暴力や犯罪行為を行う集団であり、

その構成員である暴力団員たちは、

その活動を行うために住居を利用します。

 

その結果、住居やその周辺地域では

発砲事件などの暴力行為が発生する可能性が高まります。

 

つまり、建物に暴力団員が住んでいるという状況は

一時的なものではなく、

近隣住民の安全や平穏な生活を脅かすものです。

 

そのため、通常、暴力団員が居住している建物は

売買の目的物として欠陥があるとみなされます。

 

法的に言えば、債務者が債務の本旨に従った履行をしない場合、

債権者は損害の賠償を請求することができます(民法415条1項)。

 

つまり、売買された物件に欠陥がある場合、

売主は買主に対して損害を賠償する責任があります。

 

暴力団組長が住んでいた事実から、

賃貸アパートの売主は瑕疵担保責任が問われることがあります。

 

過去には、このような状況に関する裁判例がありますが、

2020年(令和2年)4月の改正前の民法のもとでは

瑕疵担保責任が問題にされていました。

 

ただし、現行の民法では目的物の欠陥に関する売主の責任は、

瑕疵担保責任ではなく、

債務不履行責任となります。

 

つまり、売買された物件に暴力団の組長が住んでいた場合、

売主は買主に対して損害賠償責任を負う可能性があるということです。

 

 

以下で最高裁の判例を用いて解説します。

 

 

【暴力団組長が住んでいた賃貸アパート、売主の責任と判例】

 

-CASE- 東京地判令和4.5.30-2022WLJPCA05308013

 

(事案概要)

1.平成29年6月27日、買主Xと売主Yが売買代金6,600万円で賃貸アパートの売買契約を締結。

 

2.売買契約には、隠れた瑕疵がある場合の解除や損害賠償の規定が含まれていた。

 

3.アパートの一室には、暴力団組長Jが居住していることが判明。

 

4.買主Xは弁護士に相談し、Jに対して建物からの退去を求める訴訟を提起。

 

5.Jは訴訟手続きが行われた後、任意にアパートから退去。

 

6.買主Xは売主Yに対し、

     暴力団の組織が居住していたことを隠した瑕疵に基づき、

     損害賠償を求める訴訟を提起。

 

 

(判決内容)

・買主Xの売主Yに対する損害賠償請求が認められた。

 

・不動産の価値下落分は、購入価額の1割に相当する660万円とされた。

 

 

このように、売主が知っていたにも関わらず、

暴力団組長が居住していた場合、

売買契約に隠れた瑕疵があると認定され、

買主に対する損害賠償責任が生じることがあります。

 

 

【裁判所の判断】

 

裁判所は、この件に関して以下のような判断を下しました。

 

  1. 「瑕疵」とは

 

・本件売買契約20条における「瑕疵」は、

   物理的な欠陥だけでなく、心理的な欠陥も含まれる。

 

・暴力団組織に所属する者が居住していることで、

   その部屋だけでなく他の部屋も心理的に不安定になる可能性があり、

   これは「瑕疵」と認定される。

 

 

2.相応の価値下落が生じる可能性

 

・現代において暴力団排除の意識が高まっていることから、

   暴力団組織の組長が居住していたことは

   収益物件としての価値を下げる要因となる可能性がある。

 

・したがって、購入価額の1割である660万円を瑕疵による

    相当因果関係のある損害と認定するのが相当であると判断された。

 

裁判所は、暴力団組織の組長が居住していたことが瑕疵に当たり、

購入価額に影響を与える要素となると認め、

損害賠償を支払うことが適切と判断しました。

 

 

以上が、裁判所の判断に関する要点です。

 

 

【まとめ】

 

ブログ記事の形式で、

2007年に政府が暴力団排除のための指針を示し、

各都道府県で暴力団排除条例が制定されたことについて説明します。

 

 

(暴力団排除の取り組み)

 

政府は2007年に、

不動産取引から暴力団を排除するための指針を示しました。

 

さらに、各都道府県では暴力団排除を目的とした条例が制定されています。

 

 

(契約書の重要性)

 

不動産取引においては、

契約書作成時に当事者が暴力団でないことを確約させることが一般的です。

 

さらに、確約に違反した場合に契約解除を認める条項を設けることも重要です。

 

 

(不動産業者の役割)

 

不動産業者は、

暴力団を巡る取引トラブルを回避するために、

万全の準備を整える必要があります。

 

政府や地方自治体の指針や条例に従い、

不動産取引における暴力団排除の取り組みを

積極的に行うことが求められています。

 

 

月刊不動産2024年3月号より抜粋・編集したものです。

 

 

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筆者:大脇和彦プロフィール
愛媛県松山市生まれ マンションデベロッパー、会計事務所を歴して独立 不動産コンサルティングとエージェント業務が主体。近年は太陽光発電所開発運営も 趣味は、土地巡り・街巡り・山巡りを兼ねたドライブ(得意笑)、筋トレ(昔はオタク) 好きなこと言葉・・・積小為大、虚心坦懐